002.選択タネ生成

 風が肌を刺すように乾いている。目の前に広がるのはひび割れた地面と、遠くにぼんやりと見える黒ずんだ山脈だけ。デザレイン、それが、俺が追放された場所だった。


 ここはいくつもの国の国境に広がる旱魃地帯で、どの国もこの土地を放棄していると聞いている。ここには人もいなければ、作物も育たない。不毛という言葉すら足りないほど、命の気配が感じられない場所だった。


「こんな場所で……どうしろって言うんだよ」


 俺はゆっくりと空を仰いだ。日差しは強かったが、気温とは裏腹にどうしようもないほど冷たい気持ちになる。


 これからどうやって生きてけばいいのだろう。


「……タネ生成か」


 笑われて、見放され、そして追放の理由にさえなった力。だが、これ以外に頼るものはない。


「試してみるしかないよな……」


 俺は震える手でスキルを発動した。目の前に淡い光が広がり、スキルウィンドウが浮かび上がる。


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〈タネ生成〉

・ランダムタネ生成

・選択タネ生成

・植物図鑑

・タネ成長速度100倍(パッシブ)

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 スキルには「ランダムタネ生成」と「選択タネ生成」、「植物図鑑」、「タネ成長速度100倍」があるらしい。


 まずは「ランダムタネ生成」のボタンを押してみた。だが、ウィンドウに赤い文字が表示される。


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【エラー】本日中の生成可能回数は0です。次回利用可能までの時間: 8時間15分。

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「くそっ……クールタイムがあるのか」


 スキル授与の儀ですでに発動してしまったから、まだ使えないということなのだろう。次回利用可能までの時間が8時間15分とあるから毎日0時にクールタイムが明けるんだろうな。


 しかしどちらにせよこれではランダム生成は使えない。


「じゃあ、使えそうなのは選択生成しかないってことか……」


 植物図鑑は特に現状で使えそうではないし、タネ成長速度100倍はパッシブと書いてあるから能動的に使うものではないみたいだからな。


 俺は「選択タネ生成」のボタンをタップする。画面が切り替わり、生成可能なタネのリストが表示される。


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【生成可能なタネ】

・ウォーターウィード

(他は未解放)

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 リストに表示されたのは、たった一つの選択肢――「ウォーターウィード」だった。雑草扱いされた、あの種だ。


 「ウォーターウィードの種」の文字を押すと個数を選択するよう指示される。個数は1個からMAXまで選べるみたいだ。


 ひとまず1個で種を生成してみる。すると身体から魔力が抜ける感覚がして、その後、茶色い小さな種が生成された。


 「選択タネ生成」は魔力を消費するのか。雑草の種だろうと無限には生成できないってことだな。


 俺は手のひらに乗った小さな種を眺めながら考える。この土地で命を育てるには、何かを変えるしかない。ウォーターウィードだろうとなんだろうと、芽を出せる可能性があるなら、それを試す価値はある。


「どうせ、この雑草しか作れないんだ……だったら」


 俺はMAXまでタネ生成をすることに決めた。この荒れ果てた土地で少しでも種から芽を育てるには数で勝負するしかないからな。


 MAXを選択して「生成する」をタップする。


「っ……!」


生成が始まった瞬間、身体から魔力が吸い取られるような感覚が襲ってきた。さっきのスキル発動とは違う、底なしの穴に引き込まれるような感覚。


「くそ……! 流石にMAXはやりすぎたか……?」


だが、もう止められない。タネが全て生成されるまで、俺は耐えなければならない。膝をつき、息を荒らしながら、スキルの生成が完了するのを待った。


数秒後、目の前の地面に最後の一粒がぽつんと落ちたとき、俺は意識を失った。

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