003.ウォーターウィードの有用性
強い日差しに当てられて目が覚めた。頭が痛い。全身がだるく、思考はまだふわふわしている。多分魔力を限界まで使った反動がきているんだろう。今まで魔力がなくなったことはなかったので忘れていたが、魔力が空になると命の危険もあるという。うっかりしていた。次からは気をつけたほうがいいな。
強烈な日差しが瞼を刺すように降り注ぐ。ゆっくりと目を開けると強い光に一瞬目を細めた。これだけ日が昇っているってことは丸一日ほど倒れ込んでいたみたいだ。失敗した。かなりの時間を無駄にしてしまった。食料も水もない状態での昏睡は不味すぎる。
「……ん?」
おかしいな? 地面が硬くない。昨日最後に見た荒れ果てた土地の光景とは違う。手をついて上体を起こすと、目の前に信じられない景色が広がっていた。
草が生えている。
しかもそこらじゅうにだ。おそらくは昨日生成したウォーターウィードのタネから生えたらしいが、その成長速度が異常だった。わずか1日足らずで足元に広がる雑草の群れが大地を覆い尽くしている。
「まじか……」
普通の土地なら雑草が生えてくることは驚くことではないのかもしれない。だけどここはデザレイン――命が育つことを拒絶された土地だ。各国が利用価値なしとして捨てた土地に雑草とはいえ、草たちは力強く根を張り、葉を茂らせている。
しかし、すべての種を植えてそれでも一本生えるかどうかだと思っていた俺にとっては嬉しい誤算だ。これであればまだ俺が生き残る道もあるかもしれない。何か食べられる植物の種さえあれば育つ見込みがあるからな。
ぐ〜。
食べ物のことを考えていたら空腹が襲ってきた。昨日から何も食べていないし、魔力を一度使い果たしたことで身体のエネルギーは相当消耗している。雑草しかない状況で、俺は半ばやけくそで一枚の葉をむしり取った。
「食べられるのか? これ」
ためらいながら口に入れると――案の定、草の味がした。苦いというか青臭いというか、決して美味しいものではない。でも、口の中に広がるのはそれだけじゃなかった。
「水っぽい……?」
葉の中にはたっぷりの水分が含まれている。ウォーターウィードという名前が示す通り、水分を多く含む性質を持っているらしい。
「水に困らなくなるのはありがたいな」
不味いのは我慢するしかない。俺はさらに何枚か葉をむしり取っては口に入れ、喉を潤していった。完全に飢えを満たしたわけではないけれど、少しだけ身体が楽になるのを感じた。
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