第54話

*****



校舎裏の、10畳程度のバラック小屋。


この学校の不良の溜まり場になっているその場所に、明日から夏休みだという猛暑のこの日、5人の男女がひしめき合っていた。




誰が持ち込んだのか…小型のテレビの前でコントローラーを握りしめて言い合いをしているのが、北斗と香夏。


「ちょっ、お前!強くなってねぇ!?」


「だって、練習したんだもーん。」


「うぜえな、この暇人!」


「暇じゃないもん、彼氏いたし!」


「遊ばれてたくせに。」


「それを言う!?」




ぎゃあぎゃあと騒がしい二人だが、暑苦しい中その距離は肩と肩が触れ合いそうなくらい近い。


香夏を見る北斗の瞳は、普段からは考えられないくらい優しい。


…まあ、ここにいる他の三人は、そんなことには前からとっくに気付いていたが。

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