恋心は複雑に交錯する

第48話

渋谷くんの家は、わたしと北斗の家から3駅も離れたところにあった。


ちょっと高級そうなマンションで、インターホンを鳴らすと、渋谷くんによく似た綺麗な黒髪のお母さんが出て来た。






案内された渋谷くんの部屋は、バスケットボールが転がっていたりNBAの選手のポスターが貼られていたりして、全くの予想通り。


ベッドに寝転んでノートパソコンをいじっていた渋谷くんは、わたしを見ていつもみたいに爽やかな笑顔を浮かべた。


「いらっしゃい。」





頬にガーゼが貼られているけど、それ以外は目立った傷もないみたい。


「大丈夫?」


一応そう聞くと、「対して殴られてないから。」と渋谷くんは答えた。






しばらく、妙な沈黙がわたし達を包んだ。


渋谷くんがパソコンをタイピングする音が、ただカタカタと響き渡る。


やがて渋谷くんのお母さんが、オレンジジュースをお盆に乗せて入って来た。


お母さんが出て行くと、やっと渋谷くんは手を止めて口を開いた。

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