第33話

「はーん。なるほどねえ…。」


拓海くんは、わたしの顔をまじまじと眺めながら何か考え込むようにそう言った。


「まあ、良かったじゃん。飽きたら俺と付き合って。あ、咲ちゃんでもいーよ。」


拓海くんはまたすぐに笑顔に戻ると、そんな無責任なことを言い出した。


まあ、彼にとってはこれが挨拶みたいなものだけど。





「あの…北斗学校に来てる?」


そのままクルリと方向を変え、どこかに行こうとする拓海くんを呼び止める。


…そうなんだ。


あの日一緒に帰った日以来、北斗には会っていない。


だからちょっと心配で…。





わたし達にもう既に背を向けていた拓海くんは、顔だけこっちに向けてまたじっとわたしを見てきた。


「来てるよ。今も、溜まり場にいる。でも香夏ちゃんには、会いたくないだろうなあ。」


「…何で?」


「わかんないならいい。北斗慰めるのは、俺の役目だから。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る