第29話

教室中が、シーンとした。


皆の意識が、わたし達に集中されている。




す…すきって言ったよね?


しかもカナって…。


今まで苗字で呼んでたのに、どうしちゃったの渋谷くん。


これは、夢?


夢なのか?





「ねえ、俺と付き合ってよ。」


渋谷くんはまたそんな言葉を重ねる。


黒髪の中の瞳。


唇の端を少し上に上げている。


やっぱり…かっこいい。





「う…うん。」


未だこの状況が飲み込めないまま、しどろもどろに返事をした。


すると渋谷くんが、満面の笑みをわたしに向けた。

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