第27話

あいつの母さんに聞いたのかも知れない。


家具までなくなってるから、それなりのトラックが俺ん家に止まってたのかもしれねえし。


香夏の母さん、情報通だからなあ。





香夏にはこんな姿見られたくないから、俺は慌てて家に入ろうとした。


だけど地面を蹴るサンダルの音が聞こえて、突然体が柔らかい何かに包まれた。


…それは、香夏の体だった。






香夏は俺を背後から抱き締めて、一言こう言ったんだ。


「大丈夫だよ、北斗。」って。


泣き虫な香夏が、涙を流すこともなくはっきりと言ったんだ。


「大丈夫?」って心配するんじゃなくて。


「大丈夫だよ。」って、俺の名前を呼んでくれたんだ。





…ああ、あったけえって思った。


やっぱり俺は、香夏が好きだなって思った。





優しくてあったかくて、普段は弱っちいけど芯はすごく強い香夏が…。


俺は、子供の頃からずっと好きだった。





香夏だけを、見て来た。

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