第20話

「渋谷くんだけど、違うの!違うのよ、北斗!」


突然わけの分からないことを慌てふためいて言うわたしに、北斗は「は?」と眉を寄せる。


「お前、意味わかんねーぞ。」


「っ!だからもう、帰ろっ!」


北斗の腕を掴み、立ち上がる。


するとここで、思いもよらない人物が声を出した。






「川瀬北斗くんだよね。」


爽やかで澄んだ、春の風みたいな声。


振り向くと、渋谷くんの黒髪の中の瞳が笑っていた。


…北斗に向けて。






「久しぶり。」


そう言ってまた笑みを浮かべる渋谷くんに、北斗はまた「あ?」と、ガン付けとしか思えない顔を向けた。


「俺、お前に会うの初めてなんだけど。」


「あ、やっぱ忘れてた?もう大分前になるけど会ったじゃん。県大会で。」

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