第6話

思わず机に手をついて立ち上がったわたしの耳に、キャーッという黄色い声が聞こえてきた。


「ほら、噂をすればなんとかってやつ?」


咲ちゃんは耳打ちするように話し掛けてから、自分も目をハートマークにして教室の入り口を見つめた。





自分のクラスでもないのに、誰よりもふてぶてしく王様みたいにズカズカこっちに歩いて来たやつ。


無造作にセットされた銀色の髪、刃みたいに鋭い瞳、薄い唇、嫌味なくらい長い足。


…北斗。





女子達はキャーキャー叫びながら彼を見て、男子達は彼に関わるまいとビクビクする。


北斗がそんなこと全く構いもせずに、ただ不機嫌そうに真っ直ぐ歩いてくるのは、わたしの席で。






あ、口の横が赤紫色になってる。


よく見たら、目も腫れてるし…。


…またかあ。

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