第43話 貞操の危機
「壮太君♡ わ、私っ♡」
ギュッ!
俺の手を握る
「に、蜷川さん?」
俺は一歩も動けないでいた。
「わ、わわ、私っ、あ、あのね」
「
「おお、お、落ち着いてるよ」
めっちゃ挙動不審だって!
「そうだ、深呼吸しよう」
「すーはー、すーはー」
俺の言う通り深く息を吸って吐く
「落ち着いた?」
「うん、ありがとう。えへへっ♡」
ガチガチに緊張していた
「はあぁ、頭が真っ白になっちゃって、言おうとしてたこと分からなくなっちゃった」
今度は、頭を押さえた
蜷川さん……さっきから表情がコロコロ変わるな。
ギュゥウウウウッ!
もうシエルが限界っぽい。俺の体をギュウギュウ締め付けているのだが。
この場を切り抜けねば。
「そ、そろそろ部屋に戻ろうか?」
「そうだね」
ダイニングを出ようとする
「はぁ……勇気を出して告白しようとしたのにな……」
「何か言った?」
「ううん、何でもないよ」
肩を落とした蜷川さんがダイニングを出た。
グイッ!
すぐに
「壮太……」
俺の目をジッと見たシエルが、何か言いたそうな顔をする。
「何も無いから。
「でも、告白したって……」
「俺は振られたんだぞ。もうそういうのじゃないから」
「でも、相手はそう思ってない……」
「えっ?」
それは、どういう意味だ?
「壮太君、どうかしたの?」
廊下から
「あっ、今行くから」
「うん」
一度シエルの方を見て頷いてから、俺はダイニングを出た。
再び部屋に戻った俺たちだが、やはり
しきりに周囲を気にしたり、落ち着かない感じにそわそわしたり。
「え、えっと、今日は暑いね」
そう言って上着を脱ぐ
だから何で服を脱ぐんだぁああ!
「ごくりっ……」
俺の喉が鳴った。
彼女の服装が刺激的だからだ。
普段の彼女は制服のボタンは全て留めてスカートも長めなのだ。
しかし今はどうだ。
上着で隠れてはいるとはいえ、大胆に肩を出したキャミソールなのだが。それ、見せ過ぎだろ。
「そ、壮太君♡ わ、私♡」
「ちょぉーっと待った!」
「な、何かな?」
俺は目のやり場に困り思い切り横を向いた。
「その、今日の
「そうかな?」
「ちょっと大人っぽいと言いますか、何と言いますか……」
「似合わないかな?」
顔を伏せた
「そうだよね。私みたいな子が大人っぽい服なんて……。姫川さんや
ああああぁ!
フォローしないと!
「そ、そんなことないよ。似合ってる」
「ホント!?」
「うん、正直言って目のやり場に困る」
ぱぁああああ――
「そ、壮太君、わ、私で興奮してくれたんだ♡」
「えっと、それは……」
グイッ! グイッ!
どんどん距離を縮めてくるのだがぁああ!
今日の
「壮太君♡」
「はい」
「わ、わわ、私が体で温めるね♡ きゃ♡」
「は?」
「だから、風邪の時は人肌で温めるのが効くんだよ」
だからそれ何処情報だよ!
「それは遠慮しようかな……」
「だ、大丈夫だよ。わた、私、勉強したから」
だから何の勉強だよ!
カタカタカタ――
ドアが鳴っている気がする。
もしかして、またシエルが聞き耳を立てているのか?
「壮太君♡ 一緒にベッドで寝よっ?」
マズいマズいマズい! このまま流されちゃダメだ! 一時の性欲でぐらついたら、シエルの信頼を失ってしまう!
何とかして断らないと。
「
「な、何かな?」
俺が
「だから、こういうのはダメだって」
「へっ…………」
「いい、
「えっと……」
「だから軽い気持ちで……そんなこと……って俺は何を言っているんだ」
しまった。これじゃ俺が滅茶苦茶エッチしたいみたいじゃないか。
「軽い気持ちじゃないよ」
まるでハイライトが消えたような目で訴えかけてくる。
「わ、わた、私……いっぱい悩んで、いっぱい考えて……壮太君に恩返ししたくて。壮太君の役に立ちたいだけなの」
痛々しいほどの気持ちが伝わってくる。
きっと、
「
「壮太君っ♡」
「気持ちだけ受け取ったから。だから、もうそんな恩を感じなくて良いんだよ」
「えっ?」
「困った時はお互い様って言うだろ。もう助けた件はチャラにして、普通の友達に……って、あれっ?」
何だか
「壮太君、ぜっんぜん分かってない。もう知らない」
「あれっ? おかしいな」
「ふんだ」
「えっと、
「ダメだなぁ……私……いっぱい勉強して……はずなのに……本番じゃ勇気が……」
どうしよう?
もうダークオーラが漏れ出してるみたいだぞ。
ここは恩返し名目で何かさせた方が良いのかな?
「
「あっ、ご、ごめっ、ごめんね。壮太君」
「どうしたの?」
「さっきの私、態度悪かったよね。も、もう怒ったりしないから」
今度はオロオロし始めちゃったんだけど。
今日の
「一旦落ち着こう」
「おお、落ち着いてるよ」
「よし、深呼吸だ」
「すーはー、すーはー」
やっぱり俺の言う通り深呼吸する
本当に素直な子だ。
もしかして、何でもするのだろうか?
俺の中に悪戯心が湧く。
「じゃあ、次は屈伸運動」
「うん、よいしょっと」
本当にやり始めたぞ!
「次は、仰向けに寝てブリッジ運動」
「ううぅうう~ん♡」
じょ、冗談だったのに! 本当にブリッジしてるのだが!
キャミソールだと腋が丸見えなんだけど! 色々ヤバいんだけど! てか、パンツが見えそうなんだけどぉおおお!
「すすす、ストォーップ!」
彼女のスカートから白い下着が見えそうになったところで、慌てて俺は止めた。
なぜ白だと分かったかは聞かないでくれ。
「お、落ち着いたかな?
「うん」
「じゃあ、頼みたいことがあるんだ」
「うん♡ うん♡」
目を輝かせた
何で最初から思いつかなかったんだ。
差し障りのないお願いをして、彼女に借りを返させてあげれば良かったんだ。
「風邪ひいて疲れてるみたいだからさ。ハンドマッサージをしてもらおうかな?」
「うんっ♡ やっぱり手でするんだね♡」
何か違ぁぁああああぁう!
「手でするんじゃなく、手をマッサージするんだよ」
「任せて♡」
もう不安しかねえぞ!
――――――――――――――――――――
蜷川さんの暴走が止まらない。
ただのハンドマッサージですよ!
健全ですよ!
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