第42話


朝日くんの足もとで、うた猫の体が微かに光り消えて行くのを、穂香は社の格子窓から息をひそめて見ていた。



消える寸前、うた猫は「ニャア」と静かに鳴いたが、ゆでだこの様な顔をして女子高生の顔を見つめている朝日くんの耳には届いていないようだった。



ずんぐりむっくりのうた猫は最後に穂香を一瞥してから、完全に姿を消した。



「消えちゃいましたね……」



格子窓の向こうの二人は、暗がりの中で照れ合いながらもぽつぽつと会話を続けている。



「僕らの役目も、これでもう終わりや。いてても邪魔になるだけやから、さっさと行きましょう」



昂季は相変わらずの淡泊さでそう言うと、立ち上がり先に窓から離れ始めた。



穂香も、後ろを追い掛ける。



涼やかな虫の音が鳴り響く夜の境内は、雲間から顔を出した満月の光に煌々と照らされていた。



穂香はどことなく、切ない気分になっていた。



うた猫の消えたあとは、ホッとすると同時にいつも寂しさが残る。



だがこんなことを昂季に話しても小馬鹿にされるか無視されるのが目に見えているので、心の中だけに留めておくことにする。

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