第41話

あなたはもう、一人じゃないから。








精霊のいなくなった社の中に、まるで置き土産のように優しい声が響き渡る。



「朝日くん、どしたん? 大丈夫?」



現実に引き戻された朝日にまず見えたのは、目の前で心配そうに眉を下げている綾香の顔だった。



困惑した表情を浮かべる綾香は、朝日のことを心底心配しているように思えた。



「……大丈夫。ちょっとだけ、ぼーっとしちゃって……」



「なんや。急に喋らんようになるから、心配したやん」



くすくすと、綾香が笑う。



白い月光が、彼女の真珠のような肌を照らす。



朝日は、ゆっくりと目を見開いた。



こんなにも綺麗で愛しいものを、生まれて初めて見た気がしたからだ。



あなたはもう、一人じゃないから――。



その瞬間、朝日には精霊の残した言葉の意味が分かった気がした。



笑い続ける綾香の顔を、じっと見つめる。



胸の奥底から込み上げた何かが、朝日の心を優しく包み込んだ。

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