六
第33話
久しぶりに再会した和哉が去ったのは、日が蔭りだしてからのことだった。
群青色に染まる空には、白い金平糖のような星がぽつぽつと散らばっていた。
朝日の頭上に伸びた松の葉が、もの悲しい匂いのする夕方の風に煽られ音もなく揺れている。
そろそろ帰ろうと、朝日は石段から腰を上げた。
久しぶりに、級友に会えた。
それだけで今日は、ぽっかりと穴が空いたようだった心が埋まった気がした。
石壁に立て掛けた自転車を起こす。方向を変えサドルに跨ろうとした時、朝日はふと足を止めた。
西に行けば叡山電鉄一乗寺駅、東に行けば紅葉で有名な詩仙堂や八大神社に行き着く曼殊院道へと続く道は、閑散としていた。
誰もいない空間を、じっと朝日は見つめた。夜に近づきつつある辺りの景色は、透明な紺色に染まっている。
朝日は今日も、“あの子”のことを想った。
“あの子”が初めて姿を現したのは、ちょうどこの場所だった。
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