第9話

何言ってんだ、コイツ。


言ってる意味が分かんねえよ。


だが、まぁ確かにそうなのかも知れない。


根っからの悪人……テメェに言われたくねえけどな。







いつも冷静でいる自分がいる。


例えば誰かの不幸な身の上や、人の死なんかを聞いても。


へえそうかよ、ってそれだけだ。


女をヤり捨てしても、何とも思わねえ。


そうだな、俺は悪人だ。


薄々、感付いてはいたよ。


自分の本質も。


そして、行く末も。








普通に働いて金稼いで、女を一人捕まえて、結婚して、ガキ作って。


そんな人生、絶対俺には無理だ。


いつか飛び込むような気はしてたんだ。


今よりもずっと、深い闇に。








ガキの頃、闇を見たことがある。


親父にボコボコに殴られて、雪の降る屋外に放り出された時。


ぶるぶる震えながら、目の前に渦巻く闇を見た。


その時、ふと震えが止まった。


ああ、この闇に飛び込んじまえばいいんだって、気付いた。







何てことない。


その闇の奥底に──ズブリと浸かるってだけの話さ。








そうだな、悪くねえ話だよ。

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