第34話
グエンは、リュウが猿鬼と同じようなことをしていると言いたいのだろうか?
だとしたら、それでもいいとヨウは思った。
だが、目の前の男が知ったようにリュウのことを語るのは許せない。
「恵まれない幼少期? そんなの、他人が判断することじゃないわ」
突然、挑発的なまなざしを浮かべたヨウを、グエンは解せないように眺めている。
「あなたはどうなの? 恵まれた幼少期だった? 少なくとも私だって、そうだったわ。傍から見れば、お金持ちで、何不自由なく育ったお嬢さんに見えるかもしれないけど……」
ヨウは、訥々と語りだす。
「母に会えるのは、年に数回程度。あの人は、年がら年中、あちらこちらで豪遊していたから。そして私を見るたびに、ひどく嫌そうな顔をした。そのたびに、私は胸がズタズタに引き裂かれるような気持ちになったわ。使用人たちだって、いつも私を蔑むような目で見て、陰でコソコソ噂してた。広い屋敷の中で、私はいつもひとりだった。決して恵まれた幼少期ではなかったわ」
暗闇の中を、たった一人で模索しながら、ヨウは生きてきた。
大人たちの目が怖かった。ヒソヒソ声と、馬鹿にしたような笑い声も。
ヨウはそのたびに自分が何者なのか分からなくなり、己を恐れ、価値を見失った。
幼少期のことを思い出し、瞳に暗い影を落としているヨウを、グエンは無表情のままじっと見つめている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます