第33話
「実に興味深いよ。猿鬼に、境遇が似通っている」
グエンが口から外したタバコを、床に押し付ける。ジュッと音をたてて、小さな橙色の火が闇に消えた。
「猿鬼と呼ばれたティエン・リーも、恵まれない幼少時代を過ごしたと聞いたことがある。つまり、裏を返せばこうだ。恵まれない幼少期は、殺人鬼を育む」
ヨウは、リュウとの日々を思い出していた。
リュウは寡黙で、あまり表情が顔に表れるタイプではない。
だが時折見せる笑顔がハッとするほど眩しくて、魅了された。
あるとき、リュウの胸やおなかにひどい痣を見つけたことがある。
ヨウがびっくりして、『これ、どうしたの?』と問うと、『派手に転んだんだ』とリュウは笑った。
笑顔の眩しさに魅せられて、ああそうなのかと納得した自分が、今ではひどく悔やまれる。
今にして思えば、あれは転んだ痣などではなかった。
ヨウの知らないところで、リュウはチャン爺さんから、繰り返し暴力を受けていたのかもしれない。
チャン爺さんは普段は穏やかだが、ふとしたことがきっかけで、人が変わったように逆上すると耳にしたことがあるから。
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