第25話

「あんた、本当は知ってるだろ? 猿鬼のこと」


「……だから、知らないわよ」


「へえ」


整ったグエンの顔が、薄気味悪い微笑を浮かべた。





心臓が、尋常ではないほど激しく慟哭している。


蛇のようなグエンの視線に囚われたヨウには、額に滲んだ汗を、誤魔化す術もない。


ひょっとするとこの胸の動悸も、この男には筒抜けなのかもしれない。


そんな不安感から、ヨウは今にも泣き出しそうになっていた。





「予定変更だ。あんたの母親は、もう待たない」


目を細め、獲物を見つけた肉食動物のようにグエンが舌なめずりをした。


「今日から、あんたが猿鬼の情報を吐くまで拷問する」


「だから、本当に知らないのよ……!」


「あんたの目は、嘘をついている人間の目だ」


「………」


「せいぜい耐えるんだな、お嬢さん」


薄気味悪い笑みを携えたままグエンはヨウの顎から指をスルリと外すと、背を向け庭の向こうへと消えて行った。

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