第24話
「知らないわ……」
ヨウは、咄嗟にそう答えた。
「へえ、猿鬼を知らない奴なんているんだな」
気のない風に、グエンが答える。
「有名な殺人鬼だよ。残忍で、やることなすこと常識を外れている。その猿鬼が最近また現れて、赤龍会の人間を次々に抹殺してる。捕まえようにも、バケモノみたいな身のこなしで、あっという間にいなくなってしまうらしい」
「その猿鬼と、ママがどう関係あるの……?」
「あんたの母親は、猿鬼に関する重要な情報を握っていると聞いた。猿鬼の情報を掴めば、今度こそヤツを抹殺できるかもしれない」
「抹殺……」
ドクン、とヨウの胸の奥で心臓が大きく跳ねた。
―――リュウのことは、絶対に言ってはいけない。
そう、感じた。
リュウが、今どこにいるのか、何をしているのかは知らない。
ただ、最後にリュウは猿鬼のことを口にしていたから、少なからずとも無関係ではないかもしれない。
「どうした?」
物思いにふけっていたヨウは、グエンの声ではっと我に返る。
いつの間にか、氷の刃のような視線が、射るようにヨウを見つめていた。
「……どうもしないわ」
「へえ」
すると、紫煙のゆらめく煙草を、グエンは造作もなく足もとに落とした。
そして、ヨウから視線を外さないままこちらへとにじり寄る。
グエンの冷たい指先がヨウの顎を捉え、僅かに上を向かせた。
突然のことに、ビクリとヨウの背筋が震えた。
懸命に動揺を隠そうとしているヨウの顔を、グエンの温もりのない視線が舐めるように隅々まで眺めている。
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