第22話
自分の母親といえど、ヨウは彼女のことを詳しくは知らない。
母親はヨウに自分の話を全くしないし、まるでヨウに自分の素性を知られるのを避けるかのように、ヨウを邸に囲って育ててきた。
お金持ちなのは、知っている。
だが、働いている様子はない。
情けないほどに、ヨウは彼女のことを何も分かっていない。
グエンの、冷えた視線が刺さる。
ひるまず、ヨウも彼を見返した。
やがてグエンは煙草を取り出すと、無造作に火をつけた。
彼が濁った煙を青空に吐き出すまで、まるで時が動き方を忘れたかのように、時間が長く感じられた。
「猿鬼(イェングエイ)のことを、知ってるか?」
ドクっと、ヨウの胸が鳴る。
燃え盛る炎を前に立ち尽くすリュウの姿が、再び脳裏に蘇った。
―――『猿鬼のところへ』
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