第14話

「お目覚めかい?」







耳もとで、囁くような声がした。


甘さを孕んでいるのにどこかゾッとする声の質感は、あの男特有のものだ。


ヨウがうっすらと瞳を開ければ、うすら笑いを浮かべたグエンの顔が飛び込んできた。


切れ長の瞳に、高い鼻梁、薄い唇。


黒髪は、横に流されている。


見惚れるほどに整った顔立ちなのに、この薄気味悪さは一体どこから漂うのだろう。


ヨウは、この男を見る度にそんなことを考える。





グエンを睨みながら、ヨウはベッドの上でゆっくりと身を起こした。


肌を流れるシルクのシーツ、中国古来の調度品の飾られただだっ広い部屋。全てが、目の前にいるこの男の所有物だ。


「今日はいい天気だぞ。よかったら、庭に出てみないか? あんたに似合いそうなドレスを何着か仕立てておいたから、庭に出る気があるならメイドを呼ぶといい」

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