第4話

ヨウの小さな足は、圧倒的な炎を前に動かなくなる。








見慣れた、リュウのほったて小屋が。


熟れた紅いリンゴの木々が。


まるで赤龍のようなおどろおどろしい炎に飲み込まれ、囂々と唸りをあげていた。








すっかり血の気をなくしたヨウの唇が、小刻みに震えはじめる。


「リュウ……」


やっとのことで絞り出された声は、けたたましく咆哮を続ける炎の音に虚しく掻き消された。


バキンッ、バキンッと音を鳴らし、丸太小屋の木片がなぎ倒されていく。


「リュウ…、死んじゃったの……?」


己の無力さを思い知ると同時に、ヨウの瞳からは涙が溢れ出ていた。







―――その時だった。


燃え狂う小屋の中から、小さな人影がふらりと姿を現す。


ヨウは、目を見開いた。


それが、大好きなリュウだったからだ。

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