第2話

リュウの家はリンゴ農家だった。


何という品種なのかはわからない。


少し小ぶりで甘ったるい味のそのリンゴを、リュウと一緒に木の上でかじるのがヨウの一番の幸せだ。






夕焼け色に染まる小道を、リュウの家へ向けて駆けて行く。


中国の外れにあるこの田舎町の、ずらりと並んだ白壁の家は、どれもが橙色に染まり静寂の中で夜の訪れを迎えようとしていた。


そんな景色が、ヨウは好きだった。


こんな時間も、ヨウは好きだった。


あの息苦しい邸から解放されて、リュウに会えるという気持ちの高鳴り。


この瞬間は、この世のどんなものも美しく輝いて見えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る