第8話
――…
体が動けるようになってからわたしはやっと自転車置き場にたどり着き、ゆっくりと自転車を押しながら正門へと向かった。
まだあちこち体が痛いし、早く帰って髪を洗いたい。
初夏の夕暮れ時はまだまだ昼間のように明るく、部活を終えた生徒達が楽しそうに笑いながら歩いているのに違和感すら感じた。
校庭の方から、サッカー部の集団がふざけ合いながらこちらに近付いて来るのが見えた。
心臓が震える。
その中に、晴を見付けた。
茶色がかった柔らかい髪をかき上げ、青空のように澄んだ笑顔を浮かべている。
その横には、ショートカットで小柄な女の子がいた。
何かを言い合っているのだろう、女の子が真っ赤になって「もうっ!」と晴を叩くと、ハハハ、と晴はまた笑った。
ふと、晴がわたしを見た――。
心臓が早鐘を打つ。
晴は一瞬だけ冷たい瞳をすると、すぐにわたしから目を反らし、また笑い始めた。
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