第5話

「新幹線代、幾らくらい掛かるんだろ。俺、金ないんだよなぁ」


「1万円あれば、往復で何とかなると思うよ」


「1万なんか、あるわけないじゃん!」





俺はサトシの机に、ぐでっと突っ伏した。


サトシの机の上には、気味の悪い妖怪漫画が広げられている。


どうしよ、また兄ちゃんに借りようかな。


この前も、何かで借りたんだよな。しょうもない借りを、作るんじゃなかった……。






と、その時。


「あの、杉山くん」


女の子の声が、俺を呼んだ。


甘い香りすら、仄かに漂う気がする可愛い声。


顔を跳ね上げれば、クラスメイトの坂下さんがもじもじしながら俺を見下ろしていた。

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