第8話
ある朝、いつものようにルンルン気分で出かけようとしていると、庭ですれ違ったママが、「そういえば……」と思い出したかのような声を出した。
「ナズナ、知ってる? この集落には、昔から吸血鬼の伝説があるんだって」
「吸血鬼?」
「この前、お話ししたおじいさんが言ってたの。明治時代頃までは、若い女の子の血を吸いつくされた死体があちこちで発見されてたっていう言い伝えがあるんだって」
「血を吸いつくされた……?」
ぞぞぞ、と背中に怖気が走った。怖がる私を見て、ママが笑う。
「いやいや、ただの都市伝説だから! 田舎なら、どの地域にでもある類の話じゃない、怖がらなくてもいいのよ」
「じゃあ、わざわざそんな話しないでよね!」
どう考えても私をからかっているママに、腹が立った。ママは、私が子供だからってバカにして、こういう話を吹っかけてからかう節がある。
子供の頃は、ママのせいで9時までに寝ないと鬼に食べられちゃうって本気で思ってたっけ。もう13歳なのに、こんな子供だましはやめてほしい。
「あとね、昔は夜這いの風習もあったらしいわよ」
「ヨバイって何?」
「知らないの? 男の人が女の人とそういうことをしたい時に、夜中に襲うってこと」
真っ赤になった私を見て、またママが笑う。もう、本当になんて親だ。こんなママが、大和撫子さながらの小夜子さんと姉妹だなんて、やっぱり信じられない。
憤慨しながら足早にママの横を通り過ぎると、しばらくして、背後から「とにかく、あまり遅くまで遊んじゃだめよ~」と声が聞こえた。
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