第5話

「半井さんって、ニューヨークのどこに住んでたの?」



「お前、聞いたところで話膨らませられんのかよ」



「A中って誰がいたっけ? あー、藤木ってA中じゃなかった?」



「違うよ、俺はS中。A中は蒲田だよ」



「そういや蒲田は?また遅刻?」






休憩時間。なんだか賑やかな男の子達に机を囲まれて、私は身動きが取れなくなっていた。



こういうのは、すごく苦手だ。



「ところで半井さん、ニューヨークにはどうして住んでたの?」



ふと繰り出された質問に、終始俯きがちだった私は僅かに顔を上げた。



「お父さんの、仕事の都合で……」



「へえ~。ニューヨーク転勤なんて、かっこいいなぁ」




ドクンドクンと心臓の音がうるさい。



こんな時は、指先が疼く。



そして私は、再びもう片方の手で必死にそれを食い止める。











「……あれ?」

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