凍てつく再会
第4話
三年ぶりに辿り着いた町は、驚くほどに変わっていなかった。
春には見物客で溢れる、桜の並木道。駅前の路地をせわしなく往来する、制服姿の高校生やスーツ姿のサラリーマン。
木々のそよぐ音、人々のざわめき、車のクラクション。
どの音色も、懐かしい。
「半井(なからい)響子さんはA中学校の出身で、三年間ニューヨークで暮らし、この度日本に戻ってきたそうです」
四十代半ばくらいの優しそうな女の先生の隣で、頭を下げる。
ザワザワ…ヒソヒソ…。
俄かに騒々しくなる教室内。
「半井さん、知ってる人はいる? 同じ中学から来た人も、何人かいるはずよ」
私を安心させようとしているのだろう。先生がにっこりと微笑みかけて来たけど、私は小さくかぶりを振った。
例え同じ中学の人がいたとしても、知っている人がいる可能性は低い。
だって私は、そもそも中学ではほとんど人と関わりがなかった。
「そう、それは残念ね。でも、違うクラスにはいるかもしれないわ」
無理矢理に話を纏めると、先生は空いている席に座るよう私に指示した。
机に頬杖をついて、窓の外を眺める。
窓際のこの席からは、グラウンドが一望出来た。
コソコソ…ヒソヒソ…。
ざわめきが、私の気持ちをヤキモキさせる。
感情を押し込めたせいで自然と動きそうになった指先を、ぐっと反対側の手で静止させた。
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