第6話
細い路地を抜け、体育館裏から抜け出した。
昇降口で上靴に履き替え、渡り廊下を歩き自分の教室を目指す。
わたしのクラスは3-4だから、廊下の一番突き当たりだ。
渡り廊下の中盤から、昼休憩時の生徒達の声に混じり、どこからかジャカジャカとギターの音色が聴こえて来た。
渡り廊下が終わってすぐの3-1の教室。
開け放たれた廊下側の窓から、ギターの音色に混じり歌声が流れていた。
わたしには、見なくてもわかる。
―――この、声の主が。
「うっせーよ、杉山」
「うるせえ~」
ギター音に負けないくらいの音量で、次々に張り上げられる声。
それでもその声の主はおかまいなしに、気持ち良さげに歌い続けていた。
(あ、この歌新しいアルバムのやつだ)
ぼんやりと廊下を歩きながら、記憶を辿る。
先週発売されたばかりのTHE MACHAONのニューアルバム。
あいつ、もう弾けるようになったのか。
THE MACHAONっていうのは、言わずと知れた超有名バンドだ。
ボーカルのリキ、ギターのハヤタ、ベースのレイ、ドラムのテツヤ。
その4人から成る、今や日本で一番有名なパンクロックバンド。
デビュー当初から大ファンで、今でも追い掛けてる。
特にボーカルのリキの雰囲気、歌声、もう全てがかっこ良くて、わたしは本気でリキと結婚したいくらい大大大好き。
わたしだけじゃない。
今そこでクラス中の人間に罵倒されてもめげずに歌い続けているあいつも、多分本気で結婚したいくらいリキが好きなんだ。
―――あいつは、男だけど。
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