第5話

「もしかして……好きな人がいるの?」


彼はショックを隠し切れていない青白い顔で、わたしを咎めるように俯き加減に上目遣いで見上げた。


「別に、そういうわけじゃない」


淡々と、それに答える。


「もういい?」


聞きながら首を傾げれば、彼は何も答えずにただ唇を噛み締めた。


ごめんね、ともう一度小声で呟き、わたしは身を翻し彼に背を向けた。











本当は初めて好きになった人に5年間も一途に片想いをしてるなんて言ったら、彼は驚くだろう。


それが前髪ぱっつんの変なやつだって知ったら、悔しさは倍増するかも知れない。







だから、誰にも言わない。


誰にも、教えない。

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