第4話

―――高3の春。







「俺と、付き合って下さい」


今年に入って、何人目だろう?


面倒くさいから、もう数えていない。


「あの……坂下さん?」


わたしが何も答えないからか、黒髪で短髪の爽やかな彼は困惑したように眉を下げた。


眉毛が八の字のなっても、まるで海風にでも煽られているような爽やかさだ。








「ああ、えっと……」


彼の爽やかさに目が眩み、吸い込まれそうになってぼうっとしていた。


とはいっても、彼のことが好きってことじゃない。


答えなんてもう、呼び出された時から決まってる。


「ごめんなさい」


今年何度目になるかわからないその答えを、サラリと口に出した。









瞬時にその爽やかボーイは、まるで銃弾でも食らったような表情を顔に浮かべた。


もしかしたら、自信があったのかもしれない。


眉間に皴を寄せてヒクヒクさせている彼は、徐々に爽やかさを失いつつあった。


散り始めた桜の木が、ひっそりと植えられたこの体育館裏の告白スポット。


花の香りを孕んだ風が、サッとわたし達の間を吹き抜ける。

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