第12話

トースターにトーストを入れ、空になったパンのビニール袋をダストボックスに放り込む。


と、ゴミの山の上にあった紙切れが目に入った。


昨日行った、ゴーギャン特別展のチケットの半券。


途端にあの絵の前で遭遇した、奇妙な青年のことを思い出す。






変な男だった。


知った風な口をきいて、わたしの名前まで知っていた。


あの男の姿を思い出すと、得体の知れない寒気が全身に湧き起こる。


つりあがった瞳に、にんまりと歪んだ唇。


どうしてだろう。


会ったことなどないはずなのに、遠い昔からの知り合いのような―――奇妙な感覚がしたんだ。

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