第10話

長い廊下の先にあるリビングの戸から、光が漏れている。


意外だった。


父が、こんな時間にいることなんてないから。






どことなく気まずくて、足の速度が緩まる。


僅かに開いたドアの隙間からは、テレビの声が漏れていた。






『二日前〇〇特別少年院から脱走した少年Aは数件に渡る殺人事件の実行犯で―――』





物騒な事件の原稿を読み上げるアナウンサーの声が、耳に入って来る。





『警察は全力で少年Aの行方を追っています』





―――特別少年院って何?


ぼんやりとそんな疑問を抱きながら、リビングの戸を開けた。


20畳は優に超えているだだっ広いリビングの真ん中で、父はソファーに座り、テレビ画面に目を向けていた。


カーテンを開けていないものだから部屋は薄暗く、テレビ画面から漏れる光を映した大理石の床だけが、妖しく光っていた。






わたしの気配に気づいた父が、こちらを振り返る。

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