終章 その手で掴んだ結末は Like the sun, Like a sin

1 ―歓迎―

 新年度、最初の週末。

 ハイアーズ専門教育機関〈エクス=リリウム〉では、どの寮も新入生歓迎パーティーが催されるのが恒例となっている。

 ハート寮のパーティー会場は一階の講堂だ。空港ラウンジのようなカウンター席とテーブル席がいくつも並んだ室内には、同寮所属の中等部と高等部の学生が集まり始めていた。

 その雑踏の中、ミーゼは戸惑いの表情を浮かべる。


「あれ? リックってば、クライドは一緒じゃないの?」

「なんだミーゼも知らないのか。あいつ、部屋に戻ってなかったから、てっきりお前と一緒なんだと思ってたぞ」


 驚くリックの隣、ゆるふわ少女ベルダが人差し指をこめかみに当てる。まるで何かを思い出すように、その視線が宙を彷徨い始めた。


「えーっとー。クライド君でしょー。検索するからちょっと待ってねー。……ああ。彼なら放課後、遠目に見かけたよー。なんだかー、真剣な顔して歩いてたねー。あの方向は多分、職員室かなー?」

「そうなんだ。ありがとうベルダ……って、ちょっと。なんでニヤニヤしてるのよ」

「ううん、別にー。クライド君のこと、やっぱり気になってるんだなーって」

「だから違うってば! でも、クライドったら何のつもりなのかしら。そろそろパーティー始まっちゃうのに」


 誰もが楽しみにしていたはずの歓迎パーティー。その賑わいに、クライドの姿はなかった。

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