12  ―波紋―

「ほら見ろ。やっぱり応冠は危険だった」

「違いねぇ。マリオネットどもは今頃、大混乱だろうな」


 同時刻。海上都市国家クラスタリアの最南地区、第一〇島区の一角は普段と変わらず、多くの観光客とビジネスマンでごった返していた。

 ここはジョナサン=ラングール空港。クラスタリア唯一の空の玄関口である。

 北の空に向かって多くの人々がスマートフォンやカメラを構える中、射殺すように睨む男が二人。彼らの視線の先、蒼の天蓋を突き破って顔を覗かせているのは、新時代の象徴だ。

 スカイセプター。その姿は現在、クラスタリア最北端の第一島区の上空にあった。


「くそ忌々しい。あれじゃまるで、倒れきったバベルの塔だ!」


 神話の時代、人々は天まで届く塔を建て、そして神の怒りによってその塔は倒された。

 それでは、神の住まう天上から人間の住む大地へ向けて、極めて長大な巨塔を建てるのは、果たしてどれほど罪深いことなのだろう。


「はっ。だからきっと、奴らに天罰が下ったんだろうぜ」


 新世界〈ルーツ〉の扉は開かれた。波乱はまだ始まったばかり。波紋は広がる、どこまでも。

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