第2話:転生

昼寝から起きても現状は変わらなかった。むしろ事態は深刻だ。3日もこの状況が続いている。走馬灯とはもっと短い物ではないのか?俺はどうやら四ノ宮華月という名前で、5人兄妹の末っ子の3歳ということしかわからなかった。しかも、男しか生まれなかった中ようやく生まれた女の子ということで家族全員から可愛がられている。もしやこれは、生まれ変わりというやつではないだろうか。それに、中身がこんなおっさんだと知ったら全員卒倒するんだろう。


あの日、目を開けてから様子のおかしくなった俺を家族は受け入れてくれた。だから俺もこの現実を受け入れなければならない。だからと言って、口調とか考え方は3歳に合わせられない。情報番組が媒体で流れていればがっついて聞いてしまうし、どうしても3歳の子供に合わせることはできなかった。それに3歳の子供が女だからとはいえ、なんとかかしら?とか言ってたらおかしい気がする。まぁこの家族なら、女優さんの真似をしてるのね!!とかで済ましそうな勢いであるが。


兄弟の生まれた年数や情勢からわかったことは、生まれた年は2246年ということである。このまま軍に志願して入れば第四次世界大戦で祖国に貢献することができる。2度目の人生であっても、祖国に貢献したい。そう考えた俺は早かった。


「ままぁ、ぱぱぁ!!」


精一杯の甘えた声を出してこの子供の両親を呼ぶ。


「はぁい、どうしたの?」


満面の笑みを浮かべて両親がこちらへ来る


「わたし、ぐんにはいりたい!おにいちゃんみたいにかっこよくなりたいの!」


人の表情が凍りつく瞬間というものを久しぶりに見た気がする。俺の発言に動揺して表情がごっそり落ちた父、笑顔のまま固まる母。そばにいた7つ上の三男も固まっていた。ちなみに17歳の長男は今徴兵に行っているから好機と言わんばかりの状況だ。


「だだだだめに決まってる!けど、華月のやりたいことはさせたい…けど軍はだめだ!」


「そ、そうよ!死んじゃうかもしれないのよ!」


動揺しまくっている両親に宥められるが、俺はおっさんだし何度も死線をくぐってきたのだ。そんなちょっとやそっと宥められたくらいじゃ俺の思いは揺らがない。


「でも、そこくにあだなすやからはたおしたい!いんがむすべなかったらあきらめるわ!」


子供の口だから言いにくかったが、言いたいことは伝えられていると思う。


「どこで、そんな言葉覚えたの!?あなたのせい!?」


「俺じゃない!けど、印が結べるテストは政府の機関でできるらしいし、それで華月が諦めてくれるなら受けさせてもいいんじゃないか?」


「これでもし万が一にでも、印が結べる子供だったらどうするの!?自然で生まれる可能性は1億人に1人って言われてるけど、もしもがあるじゃない!!」


両親は喧嘩しているが、どうしたらいいか言われていないのでとりあえず突っ立っている。実は印が結べたらなんて言ったのは訳がある。自分の部屋で印を結んでみたのだ。そうしたら、結べたのだ。政府の子供でもなんでもないのに、俺自身驚きだった。両親の言うとおり自然に生まれてくるようになったが、確率はとても低いからだ。


後日、政府直属の調査施設にて印を結ぶ検査をしてみたがやっぱり結ぶことができた。このことに両親は泣く泣く俺の入隊希望を受け入れるのだった。まぁ、軍が印を結べる子供なんて手放したくないからなぁ。俺の軍での生活は騒がしくなりそうだと思う今日この頃だ。

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