第3話 文化人としての責務


じゃあ、嫉妬はないのか、挫折はないのか。って?

あるにきまってるでしょ!!


私なんてさっきも言ったとおり器用貧乏で色々な事やってるもんですから、

なんなら嫉妬の対象は皆さんの3倍はいるんじゃないですか!?


地獄ですよ?器用貧乏って……。


面白い奴に嫉妬して、 センスある奴に嫉妬して、 仕事早い奴に嫉妬して、 寝られない夜なんてしょっちゅうですよ!?


でも、だから辞めるかと聞かれると、辞めない。


それはね、 芸術というのは、辞めたいときに、 すぐ辞められるなんて甘いもんじゃ無いからなんです。










インプット、アウトプットなどという言葉がありますがね、 そんな物は、頭の良い方が格好つけて言ってるだけでして。


さらに頭の良い身から言わせて頂くと、ようは、「食った分働け 」ということなんですよ。


貴方が筆を取ったときから、 貴方は生産者なんです。


貴方の作った食べ物が、美味かろうが不味かろうが、

それは誰かが… 「美味いなー」 「不味いなー」 とか言いながらその人の血肉になるんですよ。

そうやって、文化って回ってるんです。


たまに、 「上手いやつだけが残ればいい」 なんてびっくりするくらい頓珍漢なこと抜かす奴がいるのですが、

そういう方に聞いてみたいのですが、 義太夫が廃れた理由ってなんですか?


能や狂言面が廃れた理由ってなんですか?


全体の数が減って、上手い人しか残らなかったからですよね?


逆に、音楽や、落語や、文学が残ってる理由ってなんですか?


全体の数が多くて、下手な奴が上手い奴を引き立ててるからです。


悲しいことに、 そいつが、粋か野暮かを決めるには、比較対象がないといけないんです。


生産する人間が多くないと、 その文化は栄養失調になるんです。


わかりやすく言いますと、 下手な奴がいるから、上手い奴が輝けるんですよ。




さて、いよいよ私が何を言いたいか解ってきましたかね。


皆さんは、始めた以上、辞めてはいけないんですよ。

芸術に対する責任がある以上。


……責任感って意外と重要でね、 スキルもセンスも無くても、挨拶が出来て遅刻しなければ案外、食っていけるんですよ。

皆さんが、執筆中の作品を途中で投げ出していなくなるのはね……

これは、お腹を空かせてる子に、 いや、私の作ったお米は美味しくないから などと言って与えないのと同じですよ?!


これは脚本家も音楽家もそう! 自信がないからって、平気で納期滞納すんの!!


それがどれだけ身勝手か、自覚を持って頂きたい!!


だから、 「自分が執筆活動している意味なんてあるのだろうか……」と、悩んでる貴方!!


意味しかないですからね!?


例えば、貴方をフォローしている作家さんが、賞をとったりしたとする。

それって、何百分の一かは貴方の功績ですからね?


該当する人が居ないとしても同じですよ。


貴方の作った物を誰かが接種して、 その接種した誰かが何かを作って、違う誰かがそれを摂取して、 回り回って文化って作られてくんです。


とにかく食え。そして働け。 これはそういう意味です。


「 自分一人が怠けても別に大丈夫……」

「 文化って、別に滅んでも生きていけるし……」


↑これを言った方は、話にならないので石器時代からやり直して下さい!

石器時代で、その日の狩りの成功を切実に祈って、岩に鹿や兎の絵を描くところからやり直して戻ってきて下さい。



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