第18話 告白……?
「頭いった……」
カーテンから差し掛かる光が頭痛を鳴らす頭に差し掛かる。
けれどどこかの光魔法のようにその痛みが浄化されることはなく、返って頭痛がひどくなるばかり。
「アイスを勢いよく頬張ったからか……?」
カーテンを閉めながら思い出すのは昨日のコンビニの帰り。
ゴムやら冷めた視線やらを忘れようと強引に口の中にアイスを詰め込んだのはいい思い出だ。
「……いや、理由はアイスだけじゃなくてあいつに振り回されたことも関係してるか」
人間は考え過ぎると免疫が下がると聞いたことがある。
あいつに実質的な告白をされたあの瞬間……なんなら昨日の夜からアイツのことを考えっぱなしだったからな……。
そのせいで免疫力が下がったのかもしれない。というか絶対にそれのせいだ。
「……一旦あいつのことは忘れるか……」
ため息とともにボフッと枕に頭を埋める。
けれど脳裏に浮かぶのはあいつの顔。
和人の顔を浮かべても、母さんの顔を浮かべても、辻野母の顔を浮かべても、靄がかかるように消えたと思えば次の瞬間出てくるのは辻野さんの顔。
「あぁ……。やめてくれぇ……」
ベッドにバタ足を立てながら嘆いてみるが、あいつは俺の思考の中でも暴れまわる。
赤面だったり笑った顔だったり悔しがる顔だったり。
とにかく脳裏によぎるのは辻野さんの顔。
俺はあいつと違って好きでもなんでもないんだ。
なのにも関わらず頭に思い浮かぶのはなぜか。
「……あー嫌いだ。ほんとに嫌いだ」
自分に言い聞かせるように嘆く俺はピタッとバタ足を辞め――不意に聞こえてくるインターホンに耳を傾けた。
「和人か……?連絡は来てないんだがな……」
念の為にスマホを開いてみる。
だが、当然通知音が鳴っていないスマホには和人の名前はない。
(なら郵便か……)
なんて思考に至った俺なんて他所に、静寂の部屋に聞こえてくる玄関の扉が開く音。
――ドタドタドタッ
「……ん?」
扉が閉まったかと思えば、次に聞こえてくるのは勢いよく登る階段の音。
2階にあるのは物置と俺の部屋のみ。
受け取った郵便物をそのまま物置に……?と疑問が浮かび上がるのだが、どうやら杞憂だったようだ。
「優夜?起きてる?」
ノックを鳴らして聞こえてくるのは母さんの声。
多分郵便物を受け取ったついでに俺の様子でも見に来てくれたのだろう。
「起きてる」
「ん、なら良かった」
俺の言葉に対して返ってくるのはなぜか安堵の言葉。
「……よかった?」
そんな言葉を呟いた時だった。
不意に開かれる扉は母さん――ではなく、1人の少女の姿を現せた。
「崎守くん、大丈夫?」
「…………おう」
なぜここにいる?なんて言葉は引っ込め、視線を逸らした俺は小さく言葉を返すだけ。
「せっかく真穂ちゃんがお見舞いに来てくれたんだから『ありがとう』ぐらい言いなよ」
「……ありがとうございます」
「なんでそんなかしこまってんのよ」
今の今まで頭の中で辻野さんがいたからだろうか。
どことなく顔が合わせづらい俺に、母さんが歩み寄ってくる。
「熱は?」
「37.6……」
「体調は?」
「頭が痛いぐらい……」
「それなら大丈夫か。真穂ちゃん、優夜といっぱい話してあげてね?」
「は、はい!」
(余計なお世話だよ!)
と口に出して言いたいところなのだが、そんな元気は生憎俺の体に備わっていない。
「それじゃあ私はリビング戻るけど、真穂ちゃんのこと襲ったらダメだよ?」
「んな元気ねーよ……」
「え、ってことは元気だったら……」
「それでも襲わねーよ……!さっさと出てけ……!!」
「やだもう反抗期なんだから」
ニヨニヨと笑みを浮かべる母さんは口元を隠しながらベッドから離れる。
そして謎に辻野さんの肩に手を置いた母さんは――
「元気そうだから襲っちゃっていいからね!」
「母さん!」
「はいは〜い」と満足気に笑みを浮かべる母さんは逃げるように部屋を後にする。
そうして扉の前で取り残された辻野さんは……痴女なのにも関わらず、意味がわかっていないようでキョトンと首を傾げていた。
「襲うってなんですか?」
「……気にしなくていいぞ。母さんの戯言だ……」
「そうなんですか」
不意にその傾げていた首を戻す辻野さん。
そしてジッとこちらを見つめてくる。
明らかにいつもと違う雰囲気は悠然と紡がれる言葉にまで出ており、逆にこちらが首を傾げたいほど。
「辻野さん?学校でなにかあった?」
「そうですね……。なかったと言えば嘘になるので、ありました……ね」
先程までの悠然さはどこに行ったのやら。
途端に赤くなる顔は場を濁すように開けたままの扉を閉める。
「ちなみにそれ、聞いてもいいやつか?」
「……はい。私もそれを伝えるために来ましたので……」
ガチャリと音を鳴らして閉まる扉。
そんな扉に突然おでこをぶつけた辻野さんは小さく息を吸い、鋭くなった瞳をこちらに向けた。
「……それを伝えるため……?」
思わず眉間にシワを寄せる俺なんて他所に、こちらに歩み寄ってくる辻野さん。
「崎守くん」
そうして俺の前で腰を下ろす。
こちらをジッと見つめながら。
「私……。崎守くんのこと、好き……みたいです……」
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