第40話 魔物召喚

虹色の魔石 『鴉』

スキル 千里眼


『千里眼とは、遠くを見るだけでなく、レベルが上がれば相手の心や近未来を感じ取る事ができる』


 早速、オレは千里眼を発動させた。すると、自分の視点がゆっくりと上昇していき、やがて上空に達すると、そこから下界の街を見下ろす。まるで幽体離脱をしてるみたい。

 さらに街の外を見ようとしたが、まだそこまでは見えない様だ。


「タケじい、この能力はかなり凄いよッ!」


「そうじゃ。千里眼は戦場を俯瞰して、戦況を有利に導く事が出来るのじゃ!」


「なんか、オレが戦場に行くみたいに聞こえるんだが……」


「まぁ今は気にせんでも良いぞ、カカカッ!」


 タケじいの含みのある言葉に思う所はあるが、もう夜も遅いので今日は素直に眠る事にした。


 チュン、チュン……。


 目覚めるとアイズウィンドウが点滅していた。レベルの高い魔鳥を多数仕留めたので、大きなレベルアップが見込める。

 オレは期待を込めてアイズウィンドウを開いた。


大和創真 Lv10 

ジョブ 商人(アームズ・ディーラー)

魔法障壁 Lv1

スキル

1、英雄遺伝子

2、異世界転移

3、交渉術

4、短剣術

5、剣術  必殺技:連撃、切払い、後の先

6、念話術

7、飲酒

8、大食い

9、ボッカ

10、召喚


 こ、これは……異世界アニメで誰もが憧れる召喚ではないかっ!!

 しかし、どうやって使うんだろう?


「ドラゴン召喚! なんちゃってぇ〜」


「ドラゴンなんぞ出てくる訳がなかろう。百年早いわっ!」


「分かってるよ。言ってみただけだよ。それじゃ何が召喚できるのさ?」


「なんじゃと思う?」


 また、タケじいのもったい癖が始まった。


「ウザッ!」


「いや〜すまなんだ。お主が、なんちゃってなんて可愛い言葉を使うもんじゃから、つい調子に乗ってしもうた。しかし、創真も昔は可愛かったの〜。今じゃ小憎らしいガキになってしもうて、じじいは悲しいぞえ」


 今度はオレの昔話。先日も長い話を聞かされてウンザリしたものだ。

 オレは早々に話を進める。


「それで、何が召喚できるんだよっ?」


「ふふん! 鴉の御守袋を握って、召喚と唱えるのじゃ!」


 オレは、じじいに言われた通り鴉の紋の御守袋を握りしめて召喚と唱える。すると、目の前に空間の渦ができ、そこから八咫烏が飛び出してきた。

 八咫烏はキョロキョロ周りを見て、オレを睨みつける。


「てめぇ、俺様の食事中に呼び出すなんて、いい度胸だなあ、アァ〜ン!」


「ご、ごめん」


「口に気を付けんか〜、このバカモン!」


「あっ、主様、す、すんません」


「主様ではないわ! 今の主は創真じゃ、また笛を吹かれたいかっ?!」


 タケじいに怒られて、八咫烏はオレに向き直り拙い挨拶を始める。


「あ、主……様……」


 八咫烏は、余程オレをあるじと呼びたくないらしい。


「もう、創真でいいよ!」


 八咫烏はニヤッとしてオレに要求する。


「じゃあ創真、召喚したんだから何か食わせろ!」


「タケじい、仲良くなれる気がしないんだけどぉ……」


「創真よ、ヤタは必ずお主の役に立つはずじゃから、今は多目に見てやってくれ」


 タケじいに説得されて、渋々うなずきヤタに携帯食を分けてやる。


 ガリガリガリ。


「不味いなあ、主ならもっと良いモン食わせろ〜!」


 何だぁ、コイツぅ!


「タケじい、やっぱり仲良くなんて無理ィー!」


「創真よ、今は我慢じゃ!」


 コンコン、コンコン。


「お客さん、部屋からカラスの鳴き声が聞こえるんですが、大丈夫ですか?」


 普通の人にはカラスの鳴き声に聞こえる様だ。


「だ、大丈夫です」


 オレが返事をすると宿の店員は去って行った。


 ガリガリガリ、ガリガリガリ!


 八咫烏を見ると、携帯食という名のかっぱえびせんを美味しそうに食べている。


 こいつ、実は美味いんじゃね〜のかあ?!


 腹が立ったオレは八咫烏を帰す事にした。


「タケじい、ヤタを返す時はどうするの?」


「なんだ、もう帰すのか? では、御守袋を握って戻れと唱えるのじゃ!」


 オレは御守袋を握り「戻れ」と唱えた。すると、再び空間に渦ができて八咫烏は両腕に携帯食を抱えたまま、「まだ帰りたくないぞ〜」と叫びながら渦の中へ吸い込まれていった。


「やれやれ……」


 ヤタを戻したオレは、朝食バイキングをたらふく食べて宿屋を出る。

 武器屋へ向かう道中、召喚スキルについて考えた。


「タケじい、もしかして因幡さんも召喚できるのか?」


「その通りじゃ。しかし、あの白うさぎはレベルが低い。あまり役には立たんと思うぞ」


「そ、そうだな。ところで、ディーンの盾は凄かったね! 一つ買ってみようか?」


「うむ、槍と弓も欲しい所じゃが、まずは盾から買ってみるかのう」


 オレ達は武器屋の隣にある防具屋に立ち寄った。


「いらっしゃ〜い。お客さん、今日は何をお探しですか?」


 武器屋とそっくりなおやじが、手を揉みながらニコニコして尋ねてきた。


「盾が欲しいんだけど……その、ご主人は武器屋さんと関係があるんですか?」


 オレは盾よりも、おやじの顔が気になった。


「ああ、武器屋は私の兄貴です。元々は1つの店だったんですが、武器と防具は職人が違うし、目利きの知識も大変なんで兄弟で店を分けたんです」


 確かに、武器屋のおやじの剣の目利きは流石だった。商売っ気が強すぎだが……。


 オレは防具屋のおやじから、大まかな商品の説明を受ける。

 商品は隣の武器屋と同じ様に、安物は入口、高級品は奥に陳列されており、鋼の盾はバーゲンセールで一律銀貨五枚との事だ。

 また、鋼の盾の構造は、表が鋼で覆われているが、裏は木製で革の持ち手が付いており、上部には魔石が埋め込まれている。

 サイズは小型と中型があり、小型は軽くて取回しが便利だが、中型はそれなりに重くて、武器との併用は相当鍛えないと出来ないらしい。

 ディーンの盾も中型だったので、相当鍛えている事が分かる。


 一通りの説明を受けたオレは、防具屋の主人にオススメを聞いた。


「ご主人、防具を買うのは初めてなので、何を買えば良いですか?」


「そうですねぇ、お客さんの剣と合わせるとしたら、小型の盾が良いですね。腕にも肩にも装着できますよ。ホルダーは別売りで銀貨一枚ですがね!」


 オレは、自分用と販売用に、鋼の盾小をホルダーとセットで二つ購入した。


「ありがとうございました〜」


 続いて隣の武器屋で鋼の剣を6本購入し、ズタ袋に入れて転移の丘を目指したのだが、たいした疲れもなく丘の上まで荷物を運ぶ事が出来た。

 どうやら、地味スキル『ボッカ』が発動していた様だ。



【第40話 魔物召喚 完】

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