第38話 メロン畑の一騎打ち
今回のターゲットはレベル13の魔鳥。
メロン農家のジョンソンさんからのクエストで、『もうすぐメロンの収穫なんだけど、魔鳥が私の大事なメロンを食い荒らしています。助けて下さい!』との事だ。
クエスト報酬は五〇匹以上討伐すれば金貨一〇枚と高級メロン一個。魔鳥の魔石は銀貨一枚と銅貨三〇枚で、かなりの高額だ。
魔鳥は見た目はカラスとそっくりだが目が赤い。そして、油断していると嘴で目を攻撃してくるらしい。
オレ達パーティは東門を出て1時間程歩き、ジョンソンさんのメロン畑に到着した。
「う〜ん、メロンのいい匂いが漂ってくるねぇ〜! たまにソーマの変なニオいが混じってるけどね!」
「ちげ〜ね〜な、ハハハハ!」
ガ〜ン!
「冗談は置いといて、魔鳥討伐の作戦を説明するよっ!」
皆んながキャロルの元に集まる。
「今日の主力はロイドとエリンだ。二人が弓と魔法で遠距離から攻撃を仕掛ける。仕留め損なった魔鳥がいたら、残りのメンバーでとどめを刺すんだ! ただし、嘴攻撃には気を付けるんだよ。ボ〜ッとしてたら目ん玉をくり抜かれるからね! それじゃ討伐開始だ!」
メロン畑の中をロイドとエリンが先頭を歩く。残りのメンバーはその後ろからついて行く。すると、ロイドが足を止めた。
ロイドは弓を構えると、前方のメロンをついばんでいる魔鳥に狙いを定めて弓を引く。
バシューッ!
ロイドの矢は振れる事なく、真っ直ぐに魔鳥の胸に突き刺さった。
「クエェェェェー!!」
魔鳥は断末魔の叫びを上げて魔石に変わると、叫びを聞いた周りの魔鳥が一斉に羽ばたく。そこへエリンが狙いすまして魔法を放った。
「ファイアーボム!!」
火の玉が花火の様に打ち上げられ、魔鳥が密集している空中で爆発する。
シュルルル〜〜〜ボカ〜ン!!
とても綺麗な花火だった。いや爆発だった。
爆発に巻き込まれた十数羽の魔鳥が気を失って空から落ちてくる。
「ディーン、ソーマ、出番だよっ!」
「オウ!」
オレ達後始末部隊はそれぞれの落下地点に行き、失神している魔鳥にとどめを刺して回ると、面白いように魔石が集まる。
さすがDランクパーティ、見事な連携だった。
ここまで倒した魔鳥の数は二〇匹。この調子で行けば午前中でクエスト達成かと思われた矢先、空の魔鳥達が再び集結を始めた。
それを見ていたキャロルがエリンに指示を出す。
「懲りないヤツらだね。エリン、もう一度花火をお見舞いしてやりなっ!」
エリンが杖を掲げて呪文を唱え始める。
「ファイアー……」
「待てっ、エリン!」
ディーンが魔鳥の動きに違和感を感じてエリンを止めた時、空にいた魔鳥の群れがエリン目がけて一斉に突っ込んできた。
ディーンは叫びながら、背中から大きな盾を引き抜くと、魔鳥に向かい盾を構える。
「皆んな、オレの後ろに隠れろっ!」
次の瞬間、魔鳥はディーンの大盾に激突し、次々と地面に落ちていく。
クエー、クエー! ドドドドドーん!!
もの凄い速さで盾に激突する魔鳥を見て震えるエリン。もしも彼女が魔法を放っていたら、魔鳥の鋭い嘴で八つ裂きにされていただろう。
オレは、冒険者稼業は死と隣り合わせな仕事だと改めて実感した。
やがて、魔鳥の攻撃が止むと、ディーンの前には失神した魔鳥の山が出来上がっており、オレとキャロルでとどめを刺して回る。すると、午前中でクエストが達成されてしまった。
今はちょうどお昼時、オレ達パーティはメロン畑の一角でお昼休憩。敷物に座りエリンの手作り弁当を食べながら午後の予定を話し合っている。
「みんな、午前中でクエストは達成してしまったんだが、まだやるかい?」
「もう十分だろう、エリンも震えているし」
「きょ、今日は帰った方がいい!」
皆の意見がまとまり、昼食を食べたら撤収という事になった。
その時、本日大活躍のディーンが、向こうの空で無数にうごめく黒い点を発見する。
「あっ、あれは何だ!」
皆が空を見上げると、無数の点は徐々にこちらへ近付いてくる。
やがて目視できる距離まで迫り、黒い点が魔鳥の群れだと分かる。その数およそ百羽。そして、皆がオロオロしている間に、魔鳥の群れは、オレ達を囲む様に次々と着地を始めた。
「なんだ、なんだあ〜?」
最後に、体長一メートル、翼を広げると二メートルの巨大なカラスが降り立ち、オレ達を睨みつける。どうやら、この群れのボスの様だ。
すると、魔鳥のボスが口を開いた。
「おい、人間ども! 俺様のシマに殴り込みたぁいい度胸だなあ〜 アァ〜ン?」
悪そうな目つきをして、下から上に顔を突き出してガンをたれている。
「えぇ〜? 魔物が喋ったのかああ〜?」
初めて聞いた魔物の声に、パーティのメンバーは驚いている。
「おうおう、この落とし前どうしてくれようかあ〜? アァ〜ン!」
魔鳥のボスはガンをたれながらオレ達を見回すと、キャロルに向かって話しかけた。
「おう、そこのねーちゃん。おめ~がこのパーティのボスだな?」
「ああ、そうだが……」
「俺達はよ〜、ここで総力戦を仕掛けても良いんだが、そうなるとお互いに被害が出るよな〜。そこでだ、代表戦にしね〜かあ? こちらは俺様が代表だ。そして、負けた方はこのメロン畑から去り、二度と足を踏み入れないという事でどうだあ?」
キャロルは周りを取り囲む百羽の魔鳥を見てつぶやく。
「この数て一斉に攻撃されると、こちらもタダでは済まないねぇ。やれやれ、しょうがない!」
覚悟を決めたキャロルがボス鳥に向かって返事をする。
「いいだろう。こちらはあたしが代表だ!」
「ちょっと待ったあ! あんたは駄目だあ。強すぎる……いやいや、女をいじめるのは俺のプライドが許さねぇ。そうだな〜、代表はそこの若いに〜ちゃんがいいなあ!」
キャロルはじぃーとオレを見つめると、意を決して返答した。
「分かった。こちらの代表はソーマだ!」
「えええー!?」
みんなが一斉にオレを見る。
「ソーマ、頼む!」
「ソーマ、おまえなら大丈夫だ!」
「ソーマさん、頑張って!」
「ソ、ソーマ……」
何か言えよっ!
皆んな応援してくれているが、はたしてオレは、このボス鳥に勝てるのだろうか?
【第38話 メロン畑の一騎打ち 完】
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