2024/12/06
洋物ホラーゲームのステージのような室内で、お揃いのワンピースに短めのジャケットを羽織った女の子二人がくすくす笑いあっているのを見ていると、なんだか背筋がぞわぞわしてきた。
「こらっ、
菊代さんが双子を𠮟りつけた。派手な外見だが、案外(と言ったら失礼か)真面目な母親なのかもしれない。
叱られた二人の女の子は、くすくす笑いながら部屋を走り出ていった。「もう!」と言いながら、菊代さんがそれを追いかけていく。
「やれやれ、角蔵さんの英才教育が行き届きすぎてるな……」
翔さんがわざとらしく肩をすくめた。泰成さんも「申し訳ありません」と肩身の狭そうなお辞儀をする。
「いえいえ。お嬢さんたちからすれば、私たちをもてなしているつもりなんでしょう」
雨息斎先生はそう言って、いかにもおおらかそうに笑った。読増さんは「あの子たち、絵になりますねぇ。後で写真を撮らせてくれないかな……」などと呟いている。常に仕事のことを考えているらしい。
一方のおれはといえば、内心ものすごくほっとしていた。よかった。あの双子、実在するやつだ……幽霊じゃなくてよかった。見た目がまるっきりキューブリック監督の『シャイニング』なもんだから、おれにしか見えてなかったらどうしよう……と憂鬱になっていたのだ。そうだよな、そもそも子どもがいるって話だったもんな。よかった。人間でよかった。
「それはともかく、皆さんのお話を聞いた限りでは」
と、先生が話題を元に戻した。「最も怪現象が多いのは、小隈野先生の書斎のようですね」
「はい、仰るとおりで……最近は鍵を閉めているのですが、それでも多少の物音は聞こえます。それに、室内のものが動く現象もやはり……」
泰成氏が顔をしかめたまま答えた。先生は「ふむ」とうなずく。
「なるほど……よろしければ、その書斎を拝見できますか?」
うわっ、やだな……全然見たくない。とはいえ、そんなことを口にしようものなら、後で先生から関節技を食らうかもしれない。色々とスペックの高い先生は、柔道も心得ているのである。
おれの内心など知りようもない泰成氏は「もちろんです!」と快諾する。
「すぐに鍵を持って参ります」
お手伝いさんに頼むでもなく、自ら取りに向かう。
「私も一旦失礼します。少々仕事が残っていましてね……」
翔さんが溜息をつきながら部屋を出て行く。
「それじゃ、泰成さんを待ちますか……おっと、失礼」
何か通知があったのだろう、読増さんがスマートフォンを取り出した。表示された画面が、たまたま俺の目に入った。
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