無実で捕まった魔法使いは真犯人を探す旅に出る

柏兎 レイ

第1話 計画の始まり

 (脱獄タイミングはこの後の移動中)


 とある王国の監獄。囚人服を着た狼の獣人である「ゼノ・ナルク」は、そう考えていた。思考の通り彼は脱獄をしようとしていた。そもそも此処にいるのは少なからず罪に問われている場合が基本だが彼は、冤罪をかけられて此処に入れられていた。だが、話が受け入れられなかったので真犯人を自分で探してやろうと、それを実行する為に脱獄を決意するのであった。失敗は出来ない一度きりの挑戦は刻一刻と迫っていた。そして、その時は遂に来たのであった。

 彼がいる牢の前に5人の看守が集まると先頭に立つ看守が話し始める。


 「1053番。身体検査だ。体を壁につけて立て」


 ゼノはそう言われると従い壁に体を寄せる。そして、体に拘束具が取り付けられようとした瞬間。彼は体を捻り足を回して2人の看守を蹴り飛ばして隙間を作る。そして、目の前に立った看守の広げていた足の間に飛び込むように体をいれて前に転がる。残った1人に腕を捕まれるが人の手から狼の足ような手に変えて爪を立てて振り払う。すると、看守の腕から血が出てきて痛みに悶えて出来た隙に避けて走り出すのであった。

 数分間走り続けると出口が見えて来る。しかし、そこには看守が立っており警備が厳重であった。そこで彼は周りを見ながら看守に向けて走り出して叫ばせる前に倒す。そのまま外に出ると路地裏へと駆け込んで座り込むのであった。


 (なんとか……耐えた。取り敢えず着替えよ)


 ゼノは手を前に出して収納魔法を使い中から服を取り出すのであった。投獄される直前に入れて置き今の今まで気付かれなかった為に出来た芸当である。そして、取り出したパーカーと長ズボンを履いてフードを被り更に上着を着て尻尾を隠すと彼は立ち上がると路地裏から出る。

 彼は身長が180程度で体格もそこまでゴツく無いためにうまく表通りの人混みに紛れ込んでいた。そのまま歩き続けてひとつの建物に到着すると周りを警戒しつつ中に入るのであった。その建物の扉には「魔法使い会員制便利屋」と書かれていた。


 建物の中はギルドのような感じであるが、別の異彩な雰囲気が滞っていた。ゼノは受付へ話し始める。


「ゼノ・ナルクだ。此処のリーダーと話させ……。いややっぱ良い。何でもないです」


 途中まで言って遮るとカウンターにいる男を見る。そして、その男も気付いたようで彼の方へ歩いてくる。


「おぉ……。ゼノ君。抜け出せたのか」


「それもそうだが。預金を全て下ろしてくれるか?」


「何かするのか?そんな急にさ……」


「力を完全に取り戻すために解呪の泉へ。あと犯人捜しさ」


 彼は落ち着いてそう言う。「解呪の泉」とは、この世界の何処かにそんざいする不思議な泉。浸かると全ての呪いが強制解除されるという効能がある。ゼノは今からずっと昔に呪いをかけられて魔法の約3分の2を使えなくなり弱体化していた。だから、その呪いを解くためにその泉へ探しながら向かいたいと思っていた。


 「そうだそうだ。ひとつお願いがある」


 男性が話し始めるとゼノは顔を上げて聞く姿勢をとるのであった。


 「新しい魔法使いの見習いの子がさ。実践積みたいらしくて……。どうだ?」


 「あのさ……俺、指名手配中だぞ。多分」


 「正確にいえばその子が君に教わりたいって言っててさ」


 「珍しい人もいるなぁ~~」


 そんなことを話していると2人の後ろから1人の少女が歩いてくるのであった。身長が165程度あり顔つき等から18くらいに見える。そして、その少女は2人に話しかけるのであった。


 「マスター。この方がゼノさんですか?」


 「あぁ。そうだよ」


 マスター……。ゼノと話していた男性はそう話すのであった。そして、ゼノは顔をそちらへ向けるとマスターに話しかけるのであった。


「この子がさっき言ってた……?」


「そうだよ。じゃあお金持ってくるからよろしくね」


 そう言うとマスターは裏へ入っていくのであった。2人きりになると気まずくなるがゼノは取り敢えず気になったことを聞くのであった。


「何で俺に魔法を教わりたいんだ?一応犯罪者扱いされてるぞ」


「いえ。魔法がとてつもなく出来る人だとマスターに聞きましたので……私、魔法な上手くなりたいんです」


 ゼノはなんと返せば困っていたが取り敢えず断る理由も無いために承諾するのであった。そして、マスターが来るとお金を受けとり2人は先程とは逆の扉から出ていくのであった。


 外に出ると少女はゼノに向けて話しかけるのであった。


「自己紹介がまだでした。リズ・ミスネティアです。よろしくお願いいたします」


「ゼノ・ナルク。知ってると思うけど狼系の魔法使いだ」


そして、自己紹介を終えた2人なそのまま静かに王国から出ていくのであった。

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