第2話:星仙学園入学試験

 依頼を受けると決め、数か月の時を有し、星仙学園の入学試験の日となった。


 この学園では陰陽師のイロハを学ぶために才能のあるものが推薦状を貰い試験を受けるのがこの星仙学園であり、七代学園統一の試験とされている。

 方式は、筆記試験と実技試験。だが、ほぼ実技試験である。まぁ、陰陽師の歴史が余りにも奇天烈で勉強しても平均点が3割にも満たないというのだからしょうがないとしか言えない。


 と、言うことで鯉永とゆきも揃って筆記試験を終え、実技試験のある、闘技場へ向かっていた。


「鯉様、私たち陰陽術使えませんよね??どうするんですか??」

「あぁ、そうだな。妖は陰陽術を使えない。そういうのあるよな。」

「もう、そういうのって………割と死活問題じゃないんですか!!」

「いや、まぁ妖力を反転すると陰陽術の術式に酷似してるからそれで行けるぞ?」

「へっ??そ、そうなんですか!?と、言いますか何で鯉様、そんなこと知ってるんですか!?」

「つい、若気の至りで………ちょっと、ね。」


 鯉永はゆきの質問をはぐらかし、そそっかしく闘技場へ向かった。


 闘技場は陰陽師として様々な能力を補助するために鍛えられる訓練場であり生徒たちが鎬を削る決闘場である。


「随分と、いい場所だな~。」

「そうですね、鯉様それと聞きたいことが。」

「ん?何かな、ゆき。」

「妖力の反転方法教えてください!!」

「あぁ、そのことか。それなら、妖力適性のない属性に変換してみろ、できなくても多分大丈夫だ。正直、妖力と陰陽の使っている力に関しては殆ど同じ性質だから、多分できなくても、妖術で使っても多分問題ないよ。」

「そうなんですか!?」

「そうなんだよ、ホントにヘンテコだよな、陰陽師って。」


 ヘンテコな歴史を持つ陰陽師、そんなこと言ったら妖の歴史もヘンテコであることは露知れず、彼らは実技試験を受けるのだった。


「試験番号37番!!前へ。」

「はい、どうも。」

「………それでは、実技試験を行う。準備はいいな。」

「えぇ。あっ………。」

「なんだ?どうしたんだ?怖気でもついたのか??この私、恐山流土御門家が三女、土御門春香つちみかどはるかに!!」


 試験官である春香はない胸を張って武器を構える。鯉永は武器を持たずに、ただ棒立ちしている。そうして、欠伸を一つしては背伸びをする。


「緊張感が無いな!!!なら、私から行かせてもらうぞ!!」

「あっ、どうぞどうぞ。」


 鯉永の煽りに春香は激昂し叫び声を上げながら、彼へ攻撃を入れていく。体術で彼のことをこけさせようとするが春香の攻撃は全く当たる気配はなく、鯉永はぬらりくらりと避けていく。

 そうして、彼女が足を払おうとした瞬間に、鯉永は瞬時に、手を掴むと春香のことを投げ飛ばす。彼女は、対応し受け身から一歩引いた。


「う~ん。」

「どうして、攻撃しないんだ!!」

「まぁ、いいや。」

「おい!質問に答えろ!!」

「『水桜ノ月』」


 鯉永は、彼女の言葉に耳を傾けず、術式を発現させる。周辺は暗く闇に染まった。

そうして、たった一滴、水滴が落ちる。水面が歪み、光が生まれた。春香は周辺を見渡す。しかし、何も無い。

 そうしてふと水でできた桜が一本だけ、存在する。


「どうだい、この簡易結界。できいいだろ?」

「なっ!?どうなっているんだ!!」

「まぁ、あなたが知る由は無いよ。これは、君を穿つために創った、対策だ。君の使う陰陽術は、結界を壊すことに特化している。だから、この結界を作った。」

「はぁ?それなら、私はこれを壊すぞ!!『業魔』!!」


 結界の中にある桜を破壊しようと、春香は拳をぶつけ、何度も何度も桜を折ろうと試みるが


「どうして!?」

「………ざまぁないね~。そりゃ、そうなんだよ。貴方は、俺よりも弱いんだから。」

「ッ!?き、貴様ぁ!!!!」

「まぁ、傍流のしかも、後継者のすらなれない人間に、情けを掛けるつもりはないんだよなぁ。」

「減らず口を!!」

「それでは。さようなら。土御門春香氏。」


 鯉永は彼女の横を通りすぎる。それと同時に桜の花弁はゆらりゆらりと舞い上がり、水面を覆っていく。気が付けば、鯉永は結界の領域内から消えている。

 それと同時に、彼女の四肢のうち右腕と左足は消え去り、彼女はそれに気が付くことに数秒遅れたのだった。


「鯉様。」

「ん?ゆきか。どうだったよ?」

「余裕でしたっ!!それにしても、陰陽師の質も落ちましたねぇ。」

「そりゃあ、成り手が減ってるわけだしな。それに、時間は欠けてられない。正直、全面抗争の方がやりやすいんだよ。」

「ですよね。でも、鯉様。土御門との対立は少々厳しいのでは?」

「試験で当たったが、幹部があのレベルなら問題ないはずだ。」


 ゆきは、質問を投げかけるとともに、鯉永は淡々と返していく。そうして彼はのんびりと言葉を返し始める。


「正直、骨喰に関しては俺は知らないことが多いんだよな。だから、少しやりたいことがあるんだよ。岩手にある斯波家、山形の最上家、そして」

「青森の浪岡家で合ってますか?」

「あぁ、俺は一先ずそこの調査をしたい。正直、学園に入るよりも動きを探れる。喜連川が動くということは、中央である、足利に不穏なことが確実に起きている。」


 足利を中心とする武家がある。正確に言うと、武士と呼ばれていた勢力。今では貴族としてこの国の中枢を担っている。武家は公家と同じ立場となり、政府を樹立。日本国家は、奇妙不可思議なものとなっていた。

 その中で、足利の力は大きくなっていった。一方で戦国の雄であった織田や江戸幕府の開祖である徳川。そして、幕末期に力を付けた薩長土肥の家に関しては、家系図としては残っているものの全て細々と続き、足利の手によって破滅へと招かれていったのだ。

 結局、源氏の血を引く家が勝つ運命であったと、どこかの史料に書かれていたという。



 

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ぬらりひょんの御気分に くうき @koooodai

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