第33話 妖精さんと殿下の宣伝効果爆発
「お客さんぎょうさんおりまんなー」
「流石に行列はないですが」
「フェアリーイーツも予約殺到〜」
妖精たちのいうことは本当です。
店内にはお客様がひっきりなしにやってきました。
閑古鳥は卒業です。
よほど必死に噂を外部に漏らさない何か対策を立てたのか、街の外には一切広がらず、かつ殿下の好物菓子というのがかなり国民の心を掴んだようです。
まさかの作戦勝ち、現実は小説よりも奇なりとはよく言ったものです。
とはいえ、街の人とか常連さんとかは、いらっしゃらないままで、街の外から遠出してわざわざ来てくれる人ばかりですし、行列とまではいきませんが……。
それでも本当は、遠くからきたお客様に対して噂を吹き込むのでは……と不安だったのですが、そのような事態は起きませんでした。
街の人たちが、そもそも噂を怖がって店に近寄らないのが原因かもしれません。
チョコ餅だけを目当てに来てる人は、街を特に散策してるわけではないみたいなので。
それともう一つ理由が。
「こっちは衰えず好調ですね。」
「ありがたや〜」
このフェアリーイーツ。
カッコンどりが鳴いている最中もずっとフェアリーイーツだけは好調だったのですが、皇子好物説が流れてからさらに注文数が増えました。
「配達先はどのような方が多いですか?」
「街の人多め」
「常連さんも多いよー」
なるほど、お菓子自体は変わらず興味持っていただけているということですか。
店に来ると私になんかされそうだから、フェアリーイーツで注文している感じですかね。
まぁ、その妖精たちだって、イタズラでものがなくなるという伝説があるわけですから、警戒されてそうなもんですけど、やっぱ可愛いは正義ですか、そうですか。
そういえば、なぜそんな伝説があるのでしょう。
少なくとも、このお店から物がなくなることはないですし、勝手に物を持っていくような子達では……
「オーナー出発です」
「荷物くださいな」
「あ、ごめんなさい。」
いけないいけない、物思いに更けてる場合じゃありません。
今日は注文数が多いんですから、ちゃっちゃと商品渡さないと。
「じゃあこれ、フェアリーイーツ用です、配達をお願いします」
「まかされよう」
「いってきまうすー」
本日フェアリーイーツ担当のうちの一人の妖精は、配達に向かおうとお決まりの三輪車のペダルに足をかけました。
そして漕ぎ出そうとしたところを私は呼び止めます。
「あー待ってください」
「なんじゃらほい。」
「何度もお伝えしましたように、貴族の皆様には、くれぐれも配達のみ対応と重々お伝えください」
「わかりましまうまー」
その語尾、言いにくくはないですかね?
別にいいですけど。
なんだかんだ貴族の方がここまで来られると迷惑極まりありません。
新たな問題が起きないよう、パーティー当日まではフェアリーイーツのみにしていただいた方が助かります。
私はフェアリーイーツの出発を見送ると、今度は入れ替わるようにアンナが厨房に入ってきました。
「オーナー、今少しお時間いいですか?お話があるのですが……」
「話?私の方は別に構いませんけど……お店の方は?」
「今ちょうどお客様が引きましたので。」
「なるほど」
ある程度人が来てくださるようになりましたが……やはり前みたいにずっと行列……というわけにはいかないですね。
遠くから買いに来てくれる人が多いので、昼間に集中して昼の2時ごろにはお客様が引いてしまうのです。
一言で言うと暇になったと言うことですね。
「どのようなお話ですか?」
しばらくはお客様も来ないだろうと思った私は、アンナに話の続きを促しました。
すると……
「私にもお菓子、作らせてもらえませんか!?」
まさかの申し出でした。
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