第11話 妖精さん貴族にも売り込むです
「どうぞ、整理券ですー」
「10時からOpenです」
「現在13時までの整理券売り切れです!」
お店の前にまさかの行列が……しかもまさか宣伝だけでは飽き足らず、整理券まで配っているなんて……
そして整理券は配るだけでなく
「整理券配りおわた!」
「これ、お客さんのほしい物リスト。」
「売り切れてても文句は言わない約束ですが、優先して欲しいです」
「用心深い」
なんとまぁ効率的な。
整理券を配るとともに、そんなお約束までした上でだとは……
そして…さらに……彼らの暴走はこれだけにとどまりませんでした
「そこの馬車止まってー」
ん?
今なってった?
馬車?馬車だと?
遠くの方から、妖精が馬車止めなかった!?
私は声の聞こえた方へ高速で首を向けた。
「旦那様、話だけでもきーてーな!」
その妖精の呼び止めに、馬車は動きを止めました。
止めてしまったのです。
そして馬車の小窓が開いたのを確認すると、
妖精は止まった馬車によじ登っていきます。
「ありがとな止まってくれて」
「妖精とは珍しい」
「これお菓子屋さんのチラシー」
「ここのお菓子美味しいねん」
「新作マドレーヌとか絶品だよ」
「ジャムつけるとうんまいヨォ〜!」
「これをどうして私に?」
「このお店、今のままだと潰れてしまうん」
「貴族様が買ってくれたら持ち直すかも」
「だからなんでもいいからかってーな」
貴族に押し売りなんてなんて恐ろしいことを!!
これだけは流石に止めざるを得ません。
「コラー!!」
私は大急ぎで馬車に駆け寄り、貴族への押し売り妖精を回収しました。
貴族の方々はお忙しいのです。どこかへお仕事へ行く途中お止めしてしまうなんて、あってはならないことです。
しかも、貴族のお屋敷ではすでにお抱えのパティシエがいます。
いまさら一般ピーポーの私のお店のお菓子を買うわけがないのです。
つまり、彼らにとっては時間の無駄!
なので、急いでお詫びをします。
「も………申し訳ございません!庶民の分際で、お急ぎの中お止めしてしまって!どうぞ、先をお急ぎください!失礼致しますーー〜!」
そして、大急ぎで走り去り、お店に戻りました。
あまりの恐れ多さと、お客様を待たせているのでお顔は拝見しませんでしたが、デビュタントすらできなかった私がお顔を見たところで、誰かわからないでしょう。
馬車を見る限り高級な素材を使っていたので、身分は高いと思われます。
きっと、貴族の人からお菓子を注文されればというのを魔に受けたのでしょうね……
「オーナー、そろそろお店開こうず」
「そうですね……この人数……全員呼び戻すのは無理でしょうし……」
もはや手遅れ、私にどうすることもできません。
彼らの気の済むまでやらせるほかないのです。
もう開店準備をしないといけなかったので、特に説教はしませんでしたし、彼らを留めはしませんでしたが。
今日のところは馬車を止めないようにだけおふれを出しました。
そして、彼らのおかげでお店は大繁盛、私は文字通り休みなく働くこととなりました。
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