第12話 妖精さんに報酬を渡したい
「つ……疲れた……」
私は扉の看板をcloseにすると、店内に戻り会計台の上に頭をのっけて突っ伏しました。
売れ行きは上場でした。
いつもより2時間も早くお菓子が売り切れて、早めの閉店となったのです。
それもこれも、妖精たちが配った整理券とほしい物リストのおかげです。
まさか、整理券配布時間できっかり売り切れるとは自分でも驚きです。
きっと、『ほしい物リスト』を事前にもらったおかげで、かなり効率的にお菓子を売ることができたのが大きいかもしれません。
「オーナーおつかれー!」
「オーナー頑張った!」
「どーもありがとうです。」
しかし、疲れたのはきっと私だけじゃありません。
ここにいる妖精たちみんな疲れていることでしょう。
勝手にやっていることとはいえ、チラシ配りをしたり、整理券を配ったり、出前までしてくれているのです。
疲れていないはずがありません。
「みんなもありがとう。お疲れ様。いつも通り賄いです」
そう言って私は、皆さんを労うためにお菓子を取り出しました。
今日は奮発してケーキです。
人数がいっぱいなので、大きめのものをみんなで分けっこしてもらうつもりです。
まあそれでもワンホールでは足りないので、何個か焼きましたが。
「すごい!」
「高さがあるケーキです!」
「食べていい?」
「どーぞ」
私がお菓子を食べる許可を出すと、妖精たちがこぞって群がりました。
「なんだこれ!」
「ふわっふわ〜」
「とろける〜」
「疲れが吹っ飛ぶわぁ〜」
「フルーツやクリームによく合うです」
ふふ、改良に改良を重ねたシフォンケーキは、妖精たちにも大好評。
ケーキを食べる彼らは幸せそうです。
みんな疲れてるかなと思ったことと、早めに店を閉めれたことで余分に作る余力がありました。
しかし、今日彼らへの労いはこれだけで良いものなのでしょうか?
いつもはお菓子屋の中で遊ぶついでの接客で、お手伝い程度のものだったので、お菓子のお礼で事足りたのですが……
今日は勝手にやったとはいえ、勧誘、チラシ配り、整理券配布、推定拘束時間は5・6時間。
長時間労働です。
この労働に見合う対価は果たして賄いで良いのか、いや、よくない。
労働基準法に反します。
しかし……妖精何人が稼働したのかは計測不可。
給料払える金額ではございません。
「みんなごめんなさい。今日いっぱいお仕事してくれたのはありがたいんですけど、お菓子以外の報酬が払えなくて……昨日も言ったようにかつかつで」
私は素直に謝罪しましたが、妖精たちの反応は意外なものでした。
「おかしでいい」
「いいのですか?」
「もちのろん」
「逆にお菓子じゃあきませんの?」
「ダメじゃないですけど……こんなに長時間労働したらお金が欲しくありませんか?」
「マネーはいらぬ」
「マネーは人間たちのもの」
「妖精には通過がございませんので。」
「人間マネー我ら使えぬ」
「そもそもお金の概念ありませぬ」
そういえば……昨日お金の話をするまで、よくわかってない感じでしたもんね。
お金で何か買ったりしてるところ見たことありませんし……。
「キラキラしてるものに興味ないです。」
「重いだけだしね〜」
「では、せめて他に欲しいものはないのですか?」
私の問いかけを聞くと妖精たちはコソコソと話し合いました。
そして、彼らが出した答えは……
「「「「「「「「金平糖」」」」」」」」
でした。
「こ……これでいいのですか?小さいですけど……」
私は近くにあった瓶に冷たれた金平糖を手に取りながらそう言いました。
すると妖精たちは目を輝かせてワラワラと私の元に寄ってきました。
「労働の後は甘いお砂糖です」
「見た目も可愛い」
「小さくて運びやすい」
「お砂糖は貴重」
「労働には見合うかと。」
本当にこれでいいのかと思ったのですが、満場一致でこれがいいというならこれでいのでしょう。
って言ってもお砂糖高いんだけどな……
金平糖の数……足りるかな……お金よりはなんとかなるでしょう。
なんとかしましょう。
とりあえず賄いのケーキを食べ終わった妖精から、名前(イニシャル)を紙にかいて、金平糖をもらいにくるように頼みました。
みんなそれを喜んで大事そうに持って行きます。
まあおそらく足りないでしょうし、ここにいる妖精も今日手伝ってくれた全員ではないので、もらえなかった子には後日来てもらうよう頼みましょう。
そうして妖精に金平糖をひとつづつ渡してる時のことでした。
「そういえば、売り上げどうですか?」
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