第28話 ゴードンのミッション


「簡単な事だ。カイラの敵を討ってくれ」


 それが俺の研究に彼らの技術を使える条件だというのだ。

 俺は、国際最新技術構築協会INTDAインダからの帰りも彼らの車に乗せられ自分のアパートメントに着いた。だから奴らの場所は分からない。


 奴らの車から降りた後、俺は自分のアパートメントの部屋に戻った。但し、一人じゃない。俺が結婚しようと迄思った女性、そして一度は死んだはずの女性カイラ・マルフィックと一緒だ。


 部屋の中に入ると彼女を見ながら

「カイラ。本当なのか?」

「ライラック。私は間違いなくカイラ・マルフィックよ」


 そう言って俺の手を掴んで自分の胸に押し当てた。俺が、唖然としていると

「忘れたの。を?」


 何も違わないカイラの形、柔らかさそのものだった。俺は思い切りカイラを引き寄せて抱き締めると

「会いたかったカイラ」

「私もよライラック」


 長い時間抱擁した後、寝室に連れて行こうとすると

「待って。シャワーを浴びたい」

「えっ?」

「何を驚いているの?」

「だって。君は…」

「そんな事考えなくてもいいのよ。一緒に入って確かめてみる?」


 俺は科学者としての興味も有った。頭の中にはINTDAインダが作った人造人間という事に対する純粋な科学者としての興味、そしてあれだけの状態になりながら俺が今触ったカイラの体に対する興味で一緒に入ることにした。


 カイラが

「ライラック、先に入っていて」

「分かった」


 俺は先に入って頭や顔、体を洗った後シャワーを浴びていると

「ライラック、入っていい?」

「ああ、構わない」


「…っ!」

 ドアが開いて入って来たのは、見間違い用の無い、生きていた時のカイラだった。俺は直ぐに抱き寄せようとすると

「待って」

「でも…」

「駄目よ」


 そう言って俺はバスユニットの端に座らせると体を洗い始めた。何処から見ても人間にしか思えない。これがINTDAインダの技術か。


 カイラの姿を見ている内に男としての本能が目覚めてしまった。

「ふふっ、もう少し待って」


 じらされているように思えるが、一通り洗い終えると俺の顔をジッと見た後、ゆっくりとその顔を下に沈めて行った。



 今は、ベッドの中に居る。信じられない事にあそこはまるで処女の様に戻っており、入れた時の感覚も彼女の喘ぎ声も人間としか考えられなかった。



 ソレイユが言っていた。外見だけでは人間と判別付かない。疑うなら君の体で確認してみる事だと。


 その通りだ。そしてソレイユは、

「今回のミッションが成功すれば、我が組織の技術力を君に提供しよう。そして自分が望んでいた研究を思い切りして貰って構わない。

 ミッションは簡単だ。桐生環奈、いや、我が社の人造人間一号機、金瀬環奈を破壊して欲しい。動かなくするだけでもいい」


「一郎の彼女は人造人間だというのか?」

「そうだ、一部の脳幹から下、脊髄からは全て我々の製品だ。それも最高傑作品だ」

「なぜ、彼女を破壊する必要がある?」

「それは君が知る必要はない。言えるのは我々のビジネスに取って邪魔な存在になって来たという事だ」

「なんだって。もしかして世界中のAIが消滅さえられているのは…」

「ゴードン君、詰まらない事に関わる必要はない。知らなくていい事は知らない方がいい。君にお願いしているのは一号機の破壊だ。方法は君に任せるよ。君は彼女に近付けるからね」


 俺は、その話を聞いた後も信じられなかった。だが、今横にいるカイラを抱いて理解した。彼女はだという事を。それならば一郎には悪いが破壊させて貰う。人間じゃないんだ。殺人にはならないだろう。


「ライラック。何を考えているの?」

「なんでもない。君の幸せだけだよ」

「ふふっ、嬉しい」


 彼女は眠る事はしないが俺が望めば目を閉じてくれるという。自分は食事はしないが家事全般全て出来るという事だ。

 トラムV3のオーダーもした。色々と役に立つだろう。顔は流石に俺に出来ないので流行のアイドルにしたが。



 翌日から、俺はグローバルマンディニューヨーク本部の自分のオフィスに出て研究に没頭した。

 いくらソレイユが俺に技術提供してくれると言っても、直ぐにそれが実現できるわけでもない。だから今は与えられた環境で行っている。


 セクレタリーが俺に、最近とても嬉しそうにしていますね。良かった。なんて言って来る。当たらずもとうからずという所だ。


 だが、一郎の妻、一号機環奈に接触する機会は中々訪れなかった。



 §国際最新技術構築協会INTDAインダ


「ライラック・ゴードンと試作機改造のカイラ・マルフィックの動きはどうだ?」

「はっ、ゴードンは、マルフィックを生きていた時の彼女と同じ様に扱っています」

「情報は取れているだろうな?」

「二十四時間完全な情報が送られてきています」

「あれはどうなっている?」


「はい、遺伝子情報は全て我々に送られています」

「そうか、上等だ。金瀬一郎と同じくライラック・ゴードンの人工クローンを作るのも出来そうだな」

「はい、その為には、彼女がもっとゴードンに抱かれないと」

「大丈夫だ。いずれ必要な情報は集まる」


 しかし、楽しみだな。ミスターゴードンがどんな手で一号機を破壊するか。真っ当な方法では破壊できないからな。


――――― 

次回もお楽しみに。

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