第27話 信じられない事


いよいよプロローグその後の始まりです。


―――――


 俺は、国際最新技術構築協会INTDAインダに連絡を取った。

『ミスターソレイユ。話をしたい』

『構わんが』

『そうか。では明日の午後九時に俺のアパートメントの前で』

『よかろう』


 ふふっ。やっと理解出来ない事が理解出来たか。獲物が蜘蛛の糸に架かるのは、美味しい匂いをさせる事だ。



 俺は、オフィスを出た後、意図的に午後九時より少し遅れて自分のアパートメントのワンブロック前でRDCから降りた。


 あの連中がどんな方法で俺に接触して来るか見定めかったからだ。ゆっくりと歩きながら前方と周りを見ながら自分のアパートメントに歩いて行くと

「ミスターゴードン」


 後ろから声を掛けられて振り向くと

「健康の為にワンブロック前から歩くのが趣味ですか?」


 目の前に立っていたのはトーマス・ソレイユ、国際最新技術構築協会INTDAインダ理事長だった。俺が無言でソレイユを見つめると


「健康に気付かうのはいい事だ。お互いゆっくりと話をしないか」


 気が付くと俺の周りには囲む様に屈強な四人の男達が立っていた。

「ゴードン君、心配するな。君に何も危害を加えるつもりは無い。君の身の保全の為に囲んでいるだけだ」


 言っている意味が全く分からなかったが、ソレイユの案内で彼らの車に乗る事にした。

「何処に連れて行くつもりだ?」

「来れば分かる」



 多分、RDCで三十分以上走る距離だ。実際はもっと遠いかも知れない。

「降りたまえ」


 何処か分からない地下駐車場に着いた車から降りると


「ライラック」

「カイラ!」

 俺は夢を見ているのか?見間違う事の無い、愛するいや愛していた女性カイラ・マルフィックが立っていた。


 カイラは俺に近付いて来ると

「会いたかった。本当に会いたかった」


 そう言って俺の体を抱きしめて来た。彼女の肌の柔らかさ、包み込む様な抱擁、そして頬に感じるかつてのカイラそのものだった。


「カイラ、生きていたのか?」

 彼女は首を横に振りながら


「でも私です」


 再度俺を抱きしめて来た。少しだけそうした後、俺はソレイユに


「どういう事だ?」

「どうもこうも無いだろう。今君が抱いている女性はカイラ・マルフィックだよ」

「カイラは死んだんじゃないのか?」

「ふふっ。そうだな死んだ。一度はな。詳しい事を知りたいか?」


 俺はソレイユを睨みつけながら、顎を引いて頷いた。

「来たまえ」


 長いエレベータに乗った。地下深く降りて行くのが分かった。止まると

「付いて来なさい」


 俺はソレイユに付いて行った。俺の後ろには四人の男が付いて来る。カイラは俺の横だ。変哲もない無機質な廊下を歩いて行くと突然横にあるドアが開いた。ソレイユに付いて中に入ると

「理事長、準備が出来ています」

「そうか」


 俺は目の前にある物をみて、そうを見て言葉が出なかった。何体もの人間の体、顔から足先まで標本の様に骨、いや特殊軽合金と人工筋肉それに這う様にいくつもの何というか人間でいう神経細胞がそれらに網の目の様に張り巡らされていた。


「これはなんだ?」

「見ての通りだ。人造人間と言ってはこの子達に失礼だな。人間予備軍だよ」

「どうしてこれを俺に?」

「ふふっ、君の横にいる試作機の頬を抓ってみろ」

 何を言っているか分からないままにカイラの頬を抓ると

「っ!」


 なんて事だ。人間の皮膚そのものじゃないか。


「どうだね。人間の皮膚そのものだろう。だが我々はもっと強い皮膚を作りたい。絶対零度の宇宙空間の中でも普通に過ごせる皮膚を。

君は人間の洋服でそれを実現しようとしていたが、皮膜の様な物で人間の皮膚を被ったらそんなもの必要無いだろう」

「何が言いたいんだソレイユ」


「簡単な事だ。我々の組織に入ってそれを実現してみてはどうかね。今のグローバルマンディの技術力では何十年かかるか分からないぞ?」

「いやだと言ったら?」

「別に構わんよ。ここから帰って貰うだけだ。但し、ここに来た記憶は消させて貰うがな」

「何を言っている?」

「今、目の前にある現実を受け入れられないのかね。君は非常に優秀な分子生物学者と聞いていたが」


 こいつらのこの技術はいったい何なんだ。しかし、俺の夢が叶うかもしれない。

「ソレイユ、条件は何だ?」

「簡単な事だ。カイラの敵を討ってくれ」


――――― 

次回もお楽しみに。

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