第19話 ミッションの遂行
環奈の洋服を買った後、アパートメントに帰って来た。途中一回だけミッションが作動したが、それきりだった。
どこのAIが消滅したかは、明日自分のオフィスから
部屋に戻ると
「一郎さん、午後三時ですね。お茶にしましょう」
「ありがとう」
妻の環奈は俺だけの分の紅茶を丁寧に入れてくれる。普通なら買い物が終わったら一緒に食事をするとかが普通だが、妻相手だと残念ながらそれが出来ない。
でも紅茶ポットに二つのティカップとソーサー。それにクッキーだ。俺のティカップに紅茶を注いでくれた後、自分のカップには注がずに戻す。でもこれだけでも二人で飲んでいる気分になれる。妻も楽しそうだ。
「環奈、言えるなら教えてくれ」
「何ですか?」
「朝、行く前に消滅させたAIは?」
「その事ですか。ドーガと言われる組織から買わされた企業のAIを使ってドーガが交通管制システムに忍び込んで不都合な運用をしたんです。ですからドーガの本拠地のAIを全て消去しました」
「それって?」
「私の事故と関係あるかは分かりません。でもあの映像を見た時、私は覚醒したんです。多分、深層意識の中にあの映像が有ったのだと思います」
「そうか、二番目は?」
「取るに足らない北欧の組織のAIが、敵対する国の防衛サーバーに攻撃を仕掛けて来たのでそれも消滅させました」
なんて事だ。環奈がターゲットにするのは
§国際最新技術構築協会
「理事長」
「なんだ、技術主任」
「一回目は分かりませんでしたが、二回目で捉えることが出来ました。二回目は北欧の組織のAIが敵対する国の防衛サーバーに攻撃を仕掛ける前に一号機がAIを消滅させました」
「そのAIは我々にとって不都合なAIか」
「関係無い組織です。国同士間の争いに我々は関与しません」
「どういう事だ。一号機にそんな役割を組み込んでいたか?」
「いえ」
「では、どうして今回の事が起こった?」
「分かりません」
どういう事なんだ。一号機はあくまで我々のビジネスの邪魔をするAIだけを消滅させるように作ったものだ。
「技術主任、今の所、我々に不都合な動きはしていないだろうな?」
「それはありません」
一号機にこちらから何をする事も出来ない。どうしたものか。
「二号機の開発はどうなっている?」
「今回の事がはっきりしないと同じ動きになる可能性があるので作業を止めています」
「分かった。引き続き一号機の動きを注視して新しい事象が発生したら直ぐに教えろ」
「「「「「はっ!」」」」」
俺は翌日ニューヨーク本部に出社して自分のオフィスに入ると壁に埋め込んである百インチのディスプレイに
そしてそれぞれの先に表示されているポイントがAIだ。商用AI,医療用AI,工業用AI、交通管制AI、その他人間の生活を支援する色々なAIだ。
昨日、環奈はドーガという組織と北欧の組織のAIだと言っていた。ドーガは俺も知らなかったのでボイスインディケータで占めさせるとEUの地中海の傍にある国の中に有った。ドーガと書かれているAIがレッドでブリンクしている。
もう一つ北欧の組織と言っていたが、そちらを見るとノルウエーの国の中の一つの組織のAIが同じくレッドでブリンクしていた。
しかし、どうやって環奈はこれらのAIを消滅させたんだ。ここまで来ると俺の専門外になる。
この事は社内では誰も話さない。セキュリティ上の理由だ。ライラックが秘匿連絡で聞いて来たが俺も分からないと言っておいた。
それから一ヶ月は静かだった。自分の研究を進めながら会社の仕事も進めていた。そろそろトラムV4の開発に着手した方が良いとCEOに提言している。
ロボのコンシューマのリクエストからビジネスに有益は内容を抽出して反映している事とは別だ。
ロボは人間並みの大きさよりも二頭身、三頭身の方が受けが良くて、最近は亡くなった彼とか彼女の顔を再現してくれと言うコンシューマもいる。分かる気もするがどうかと思うよとライラックが苦笑いしながら言っていた。
そんな平常な日々を過ごしている時、
§国際最新技術構築協会
「理事長、商用AI大手の二つのAIが消去されました」
「なにーっ!何処だ?」
「学習をサポートするAIと宇宙望遠鏡をサポートするAIです」
「日本とアメリカに有る大企業じゃないか。なんで?」
「それが…。理由は分かりません」
「何だと?」
一号機は何を理由に消滅させているんだ?
俺は、その日いつもより早く帰宅した。今日の出来事が気になって仕方ないからだ。アパートメントに帰って部屋に入ると直ぐに
「環奈、今日ミッションを遂行したか?」
「はい、何か?」
「俺に遂行した理由を教えて貰えるか」
「はい、私の大切な夫、一郎さんです。隠し事はしません。今日消滅させたのはAI双方向で人類に関わる不都合な会話をしていたからです」
「不都合な会話?」
「はい、高度四百キロメートルにある宇宙ステーションに同軌道上より五十キロメートル上にある宇宙望遠鏡をぶつけたら面白いだろうなという会話をしていましたので」
「なんでそれが分かる」
「はい、私の頭の中に入って来るんです。仕組みは私にも分かりません」
なんて事だ。これは
―――――
次回もお楽しみに。
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