第15話 環奈との生活


 俺達は一緒にエレベータに乗って俺の部屋に入った。そしてもう一度抱合うと

「一郎さん、お風呂準備しますから入って下さい」

「ああ、頼む」


 明らかに試作機とは違う感情のある声だ。自分の意思で発している。試作機はあくまで俺の言葉に反応しているだけだ。


「一郎さん、もう少しで湯船が溜まりますからね」

「うん」


 湯船が溜まった後、風呂に入って体を洗った。そこにガラスドアがノックされて

「一郎さん、一緒に入って良いですか?」

「…ああ」


 お風呂のドアが開いて何も着けてない環奈が入って来た。見間違いが無い、生きていた時の環奈の姿だった。

「体を流させて下さい」

「頼む」


 洗い始めのボディスポンジを環奈に渡すと軽く背中を流してくれたそして前も全て洗ってくれた。シャワーで泡を流すと

「湯船に入って下さい。私も綺麗にします」


 湯船から見る環奈の仕草は何処から見ても人間そのものだ。どうやったらここまで精巧な動きを出せるんだ。


「一郎さん、私の体に興味ありますか?」

 どういう意味で言っているんだろう?


「妻としてはとても…でも」

「いいのです。それだけ聞ければ」


 それから、俺は先に風呂から出てタオルで頭を拭いた後、バスローブを着た。そして環奈が出て来た。バスタオルを巻いたままだ。


「一郎さん」

 俺は黙ったまま頷くと環奈の体を持ち上げようとしたけど

「ごめんなさい。前より重いです。理由は後で話します。その前に」


 環奈はバスタオルを取ると俺に抱き着いて来た。試作機で抵抗が無くなっているが、最初は優しく口付けをした後、生きていた時と同じようにした。

「ああ…」


 試作機と声が違う。胸を触りトップにキスをすると更に声が大きくなった。そしてゆっくりと顔を下げると、信じられない。


 あまりにも精巧に作られている。確かにここの構造は人類が大昔から全て分かっているがここ迄に精巧に作れるのか。人間のそれそのものだ。それに興奮にしているのか液体迄流れ出ていた。


 一通りの準備をしてあげた後、ゆっくりと入れると

「あなた」

「環奈、分かるのか?」

「はい、脳の中にはっきりとあなた自身が入って来るのを伝わってきます」

 INTDAインダの技術力とはどこまで?


 その後、環奈は頂点に達して行った。信じられない。どうすれば脳とここの感覚を調和出来るんだ。


 でもその姿に俺は生きていた時の環奈を抱くように三回もしてしまった。その度に環奈は喜びの声をあげてくれた。


 俺が疲れて環奈の横になると

「ふふっ、あれ以来ですね。とても感じてしまいました」

「どう感じるんだ?」

「体が感じるんです。それをきちんと脳が感じてくれるんです。INTDAインダの人達は言いました。全く生きていた時と同じになれると」


 INTDAインダという組織は俺の知識レベルを遥かに超えているのか。でも隣にいる環奈は生きていた時の環奈と寸分変わらない。


「環奈、今日はもう寝よう。疲れただろう」

「はい、体は疲れませんが脳は疲れます。だから私も眠ります」


 そして十分もしない内に環奈は寝息を立てた。寝顔も生きていた時と寸分も変らない。作りたい。俺の手でここま精巧な物を作りたい。



 朝、意識が戻ると横に環奈がまだ寝ていた。気持ちよさそうだ。試作機と全く違う。人間そのものだ。


 俺はベッドのヘッドレストの時計を見るとまだ六時前。もう少し寝かしてあげれる。俺がベッドから起きようとすると手を摑まれた。

「忘れたんですか一郎さん」

 何か忘れたか?


「もう、ベッドから出る時は二人で…」

 思い出した。


 俺はゆっくりと環奈の唇に俺の唇を付けると彼女は俺の首に手を回して来た。そして

「おはようございます。一郎さん」

「おはよう。環奈」


 もう一度口付けをした。それから二人で起きた。



「一郎さん、私の洋服は?」

「済まない。試作機の物しかない」

「取敢えず今日はそれですませましょう。明日はお休みですよね。買いに行きましょうか。朝食を作ります。ちょっと待って下さい」

「ごめん、食材が無いんだ。君が…、いや一人の時は本部の食堂で三食食べていたから」

「では、明日から私が朝食を作ります。夜はお仕事柄仕方ないですからね」

「済まない」

「謝る事はないですよ」




 §国際最新技術構築協会INTDAインダ


「どうだ、一号機の動きは?」

「理事長、予定通りです。一号機の体の各部に受けた圧は全てデータとして受信しています」

「そうか、より人間らしい体にする為には必要な情報だからな。しかし、ミスター金瀬は相当に一号機を気に行った様だな」

「はい、やはり生きた脳が受ける情報は人工物とははっきりと異なりますから」


「例の物の発動はどうなっている?」

「現在に生きている脳の部分と人工的に作り上げた脳の一部脳幹が結合しているだけで融合はしておりません。この二つが融合すれば一号機は覚醒します」

「そうか、時間的には予定通りか?」

「はい」

「結構だ」

「「「「「はっ!」」」」」


 会議室に集まった研究主任達が部屋を出て行った。一号機は今現在この組織で作り上げれる最高の作品だ。もっとミスター金瀬と日常を過ごして貰ってもっとデータが欲しい。


 しかし、相手が人工物だと分かっていても彼は自分の感情を表に出した。このまま行けば自然と……。楽しみだな。


――――― 

次回もお楽しみに。

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宜しくお願いします。

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