第4話
昼休みになると、春樹はサッカー部の練習に行った。朝昼晩と練習しているので、熱心なことだ。俺は春樹がいなくなると、基本的にスマホゲーをしている。単純にクラスに知り合いがいないから、それ以外にやることがない。
「え~!金城君、彼女できたの!?」
うるせぇな……
横目で見ると、クラスのカーストップ勢が金城を詰めていた。
「ああ」
「ええ~!それ?クラスの人?」
「いや。昔からの知り合いでな。幼馴染ってやつだ」
「うわぁ!羨ましい!」
「ほらほら、唯煌も何か言ってあげなよ!」
反射的に振り返ってしまった。普段は教室で誰が話していていようがどうでも良いと流せるが、昨日のこともあったので、気になってしまった。
そういえば、今日は全然話し声が聞こえてこなかったな。
振り返った先にいた灰銀はいつものメインヒロインだ。屋上で見たあのヒドインの姿は全く影を見せない。だが、昨日の今日でフラれたのだ。そんな人間に祝福の言葉など地獄過ぎる。
「おめでとう、金城君!幸せになってね!」
「あ、ああ」
見てらんねぇよ……
流石の金城も気まずいのだろう。微妙に目を合わせていない。
灰銀の外面は完璧だが、右手の毛細血管が浮き上がっているし、よく見ると唇の端っこから血が流れている。
「その彼女と付き合ってどのくらいなの?」
「ん、ああ、まだ一週間くらいだ」
「ええ!付き合い立てほやほやじゃん!」
「いいな~」
女子たちが一気に盛り上がる。金城の周りだけ鯉が集まったみたいになってる。
「こんなに早くバレるとは思わなかったがな……」
「女子のネットワークを舐めないでよ~」
「そうそう。恋バナセンサーに触れたらすぐに調査を開始するのが女の子だからね」
「そ、そうか」
怖すぎる女子たちにあの金城がビビってる。
「今度、紹介してよ。カラオケで唯煌が祝福してくれるってさ」
「え!?」
「それいいね!『スター☆トレイン』の元センター!その歌声を聞きたいなぁ」
「そ、それはちょっと…」
もうやめてあげて!灰銀のライフはもうゼロよ!?
自分の想い人が他の女と結ばれたのを歌で祝福するって想像するだけで心が痛くなる。
当の本人も驚いてるし……
普段ならスルーするが、乗りかかった舟だ。灰銀に何か恩があるわけではないが、地獄に堕とされそうな人を見捨てるほど人間を辞めてるわけではない。
「灰銀さん」
「「は?」」
女子の皆さんが、冷たい視線を俺に向けてくる。しかし、今回だけは負けるわけにはいかない。
「ちょっと、伝えたいことがあって…屋上に来てもらっていいかな?」
「え…?」
空気が変わる。
アレ?俺何か間違えた?
とりあえず灰銀に目くばせをすると、何かを察してくれたようだ。
「ああ……そういうこと。みんな、ちょっと行ってくる」
灰銀は立ち上がると、俺を見た。
「それじゃあ行こうか。ネムレス君」
名無しじゃねぇよ。後、いい感じに略すな。
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